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カウボーイハットにジーンズで登場した、萩原流行。ガッチリとした体型からは、60歳とは思えない若々しさを感じる。高校時代から始めたウエスタンファッションとほぼ同じ年月で、役者生活を続けている彼が今回、挑戦するのは、実話をモチーフにした舞台。しかも、その内容は現在進行形の〝事件〟だ。

はぎわら・ながれ★

53年4月8日生まれ、東京都出身。高校卒業後、劇団「ザ・スーパーカムパニイ」に入団。その後、演出家の故・つかこうへい氏の公演に
参加。おもな出演作に、舞台『スタンド・バイ・ミー』(91年)、映画『修羅がゆく完結篇』(00年)などがある。11月1日(金)より、主演映画『瞳を
閉じて』が公開される。

舞台ドキュメンタリーシアター『息をひそめて―シリア革命の真実―』

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赤坂レッドシアター
11月11日(金)~17日(日)
東京・赤坂RED/THEATERにて
問)ぷれいす/03-5468-8113

 

――今日もファッションが決まってますね。
「あはは(笑)。僕が16歳のころは、ジーパン、ジージャンを着ているのは不良といわれていたんですよ。でも、僕はスティーブ・マックイーンが好きで。『荒野の7人』を見て子供ながらに『この人のセンスはすごいな』って思ったんですよ。超かっこいいって思った。ファッションも、銃のさばきも。それで高校のときにアルバイトをして、ジージャンにジーパン、そしてウエスタンブーツを買ったんです。そのとき以来、60歳になる現在まで、同じファッション。だから一般の服は持っていないんですよ(笑)」

――お芝居のときだけ一般の服を着るという感じですか?
「仕事でサラリーマンの役をやるとか、そういうときは着ますけど、私服は全部こんな感じです。44年間、同じ格好。よく外を歩いていると『衣装ですか?』って聞かれて『いえ、私服なんです』って(笑)」

――今回のこの作品は、シリア情勢をテーマにしているということですが。
「11年に、ゾウ・ラファティという演出家がBBC(英国放送協会)とシリアへ取材に行き、それをもとに舞台化したものです。実話なので、取材した相手は仮名にして、なぜ今、シリアがこうなってしまったか、というところまでが描かれています。12年にイギリスで初演され、リアルな内容を扱っていることから評判になったんです」

――今回、萩原さんは、どんな役を演じられるのでしょうか?
「僕はBBCのスタッフが泊まったホテルの支配人で、キリスト教徒の役です。シリアはほぼ100㌫がイスラム教徒なんですけど、少数派として、多くの宗教がある。キリスト教徒の彼もそんな立場です。彼は、アサド政権を支持してはいるけれど、そうでない人たちが多いことも知っている。とはいえニュース映像では、政府はデモの様子を見せない。インターネットも接続不能で、何が起きているのか分からない。政府が言っていることと、現実で起きていることが矛盾していないか? と思っている人です」

――その方は今、存命しているのでしょうか?
「今現在、どうなっているのかわかりませんが、間違いなく実在した人です。わずか2年前のことを描いていますが、シリアの現状は2年前のことさえ、あっという間に過去になってしまう。それくらい、ものごとの進行が早くなっていますよね」

――シリアの情勢について、以前からご興味を持たれていたとのことですが。
「世界情勢や政治経済に関心があって、ニュースを見るのが好きなんですよ。インターネットを開けば、シリアのニュースではカットされているような露骨な部分も流れていて、そういうものも見ています。なるべく知らないことを減らすようにしようという努力はしています」

――イギリスでは上演時に話題となった作品ですが、日本ではどのような反応がくるか不安でもありますよね。
「イギリスで上演したときは、もっとリアルな空気感があったと思うんです。シリアとの距離も遠くないし。ただ、日本で上演となると。シリアの人たちと違って、僕たちは普段、死と隣り合わせにいないですよね。家を出たときに撃たれるような心配はないし、政権に反対しても警察には捕まらない。そういう状況ですから、日本人は、『あ、そうなんだ』というところまでで終わっちゃう気がするんですよ。ただ、今回のシリア問題に関しては、現在進行形ですからね」

――たとえば、どのような状況の人たちが登場するのでしょうか。
「子供を殺され、銃を持った母親。拷問されて、反政府運動に参加した学生、エジプトで仕事をしていて、インターネットを見たら反政府運動をしているので、帰って、いっしょに運動を始めた人……。いろんな状況、すべては本当のこと。それが日本人にどれだけ伝わるのかというのがすごく不安です。自分の国に置き換えて考えられるようにしてもらいたいけど、演技でそう見せられるかという、自分への不安があります」

――稽古をして、さらに、シリアの状況について考えさせられることもあったのでは。
「BBCの取材を受けた現地の人も言っていたけれど『他人のことだと思わないでほしい』って思いました。シリアみたいな状況になったら、どうする? というリアリティを持ってほしいし、リアルに感じてほしい。だからといって、僕が銃を持って現地へ行っても役に立ちません。ならば、まず関心を持つことが大切だと思います」

――最後に作品のPRをお願いします。
「1週間という短い期間の上演になりますけども、芝居が終わったあとにゾウ・ラファティさんとのトークタイムもあって、とても、リアルな話が聞けると思います。ぜひシリアの現状を知っていただきたいし、世界情勢をリアルに感じてほしい。今この瞬間にも、シリアでは人と人が撃ち合い、殺し合っている。この舞台で、シリアに関心を持ってもらいたい。僕が役者として参加する意義はそこにあると思うんです」

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