ロンドン五輪出場を目指すしずちゃんこと山崎静代(33)。彼女を一番そばで支えているのが、トレーナーの梅津正彦さん(43)だ。しかしそんな彼を突然、悪性の皮膚がんが襲う。16日には手術を受けた梅津さんが、入院直前、本誌に今の思いを語ってくれた――。
梅津さんの右脇腹に見つかったのは、“メラノーマ”という悪性皮膚がんだった。メラノーマの患者数は皮膚がん全体の5%程度だが、死亡者数は皮膚がん全体の8割を占める。転移が早く、最も予後の悪いがんの一つ。早期発見できれば手術で治るが、ほくろと似ていて手遅れになるケースも多い。
「2月3日、全日本選手権の8日前でした。ジムで、しずとアシスタントトレーナーの2人を呼んでね。『やっぱりコレ、悪性だったわ。多分、転移しているだろうということで、もしたしたら手術できないくらいかもしれない』って話したら、しずが泣きだして……」
1月27日、緊急手術となり右脇腹の腫瘍を摘出。腫瘍を検査した結果、悪性と判明し、次の手術は2月8日の予定と決まった。だが、梅津さんは手術の延期を申し出る。2月11日にしずちゃんの全日本選手権が控えていたからだ。
「がんのことを話してからは、練習中しずがキツくてリングに崩れ落ちると『頼むよ、しず。これくらいでへこたれるな。俺はがんだぞ』なんて自虐ネタに使ったり(笑)。俺の病気くらいで、しずのマイナスになるわけにはいかない。でも、先生が脅かすわけですよ。『これは肺がんや肝臓がんより怖いがんなんですよ』『手術しないとたぶん1年もちません』って」
医師から“余命1年”と診断された梅津さんのがんは予断を許さない状態だという。インタビューの翌日、しずちゃんの公開練習が行われた。梅津さんは公開練習後、入院のために病院へ直行することになっていた。練習の最後には、梅津さんとのスパーリング。途中で何度も息が上がっては倒れ込むしずちゃん。号泣し、また立ち上がっては倒れ、ポロポロと涙を流す。それでも彼女は、ハードな練習をやめることはなかった。
「しずは、俺にとって最後の教え子、夢を繋ぐアンカーなんです。しっかりバトンをつかんで、転ばないように。最後まで走ってくれよ。今はそんな思いです」