「僕でいいんですか?って、この映画の話がきたとき、思わず聞き返してしまいました。演じてみて、農業っていうものがいかにクリエーティブな仕事なのかということが、よくわかりました」

主演映画『種まく旅人〜みのりの茶〜』の公開を前に、作品への思いを熱く語ってくれた陣内孝則(53)。この作品は大分県臼杵市を舞台に、風光明媚な風景の中で、お茶の有機栽培を営む人々を豊かに描いた”オーガニック・シネマ”だ。

「農業に従事する役は、はじめて。母方の祖父が農業とか養蜂業をやっていて、そのDNAは入っているんですが、今回、有機で作ったお茶を飲んで口に含んだときの香りに驚きました。こんなうまいお茶があるんだってね。有機農業でお茶を作るってことが、いかに困難なことかも、はじめて知りました」

映画は、突然、祖父の茶畑を引き継ぐことになったみのり(田中麗奈)を、陣内演じる大宮金次郎が風来坊の『金チャン』として助けていくストーリー。身分を隠しているが、金次郎は全国の農家を回り、農業の発展に尽力する農林水産省の役人で、かつて大きな挫折を味わい、そこから再生してきた過去を持つという難しい役どころ。

「金次郎は大地とともに”再生”してきた男。たまたま先輩が農水省にいて、そこでヘッドハンティングされ、もう一度大地に関わる仕事をしようとします。この映画はひとりの男と、ひとりの女の再生のドラマなんです」

大地や再生といった、今日的テーマを扱っているこの作品だが、ロケは一昨年の11〜12月に行なわれた。撮影前には10キロの減量をして、現地入りしたという陣内。

「現地の方があたたかく、作ってくれたご飯をいただいているうち、8キロ戻ってしまいました(笑)。撮影中は、あれだけの震災が起こるなんて思いもよりませんでした。時代がまさに大地からの再生を求めている今、大地に根づいて生きていることがいかに幸福なことかを、改めて考えさせられています」

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