7月16日、東京・代々木公園を会場に『さようなら原発10万人集会』が開催された。それに参加したのは、本誌でエッセイを連載する、作家の室井佑月さん。デモに参加するきっかけは、6月29日に永田町の首相官邸前で行われた『大飯原発再稼働に反対するデモ』の様子をネットで観たからだ。

「6月29日のデモに集まったのは、主催者発表によると15万から20万人。しかし、警視庁調べでは約1万7千人ということになっていた。翌日のA新聞には『15〜18万人』と書かれていた。しかし、B新聞には『2万人弱』、C新聞にいたっては具体的な記事さえ載っていなかった。おかしいと思った。10倍も人数が違うなんて」(室井さん)

B新聞には『デモの中には暴力的な行動をとってきた過激派も交じっているので、トラブルや事故防止で警備に当たった警視庁は、神経をとがらせている』と書かれていたが、実際に29日のデモに参加した室井さんの友人は「たぶん、あんなに礼儀正しいデモを起こせるのは日本人だけだ」といって感激していたそうだ。

政府がいくら国内メディアに圧力をかけ、自分たちに都合の良いニュースしか流さないようにしても、今はネットやツイッターなどで真実は漏れる。室井さんは実際にデモに参加することで、大雑把にだが肌感覚でデモに集まった人数はわかるはずと、参加を決意した。

7月16日、デモ当日。メインスタジオは人があまりに多く近寄れない(労組や地方の団体などの旗がひしめく)。そのため、室井さんはその周辺で参加者を取材してみることに。何人か話を聞かせてもらった中のうち、3歳の子どもと5カ月の赤ちゃんを連れた女性のこんな言葉に、室井さんは言葉を詰まらせた。

「福島原発が爆発した後、この子(下の赤ちゃん)を妊娠したんです。とても不安でした。同じ時期に妊娠した友達は不安だからっていうんで、すぐに九州に引っ越しました。私のまわりの人たちは、そうやって深刻に考えている人と、そうじゃない人の温度差があります。放射能のことを言ったりすると、『あの人、気にしすぎよ』って陰で噂されるんです。でも……今日は来て良かった」

この日のことを室井さんは、「B新聞が危惧しているような過激派は、あたしが見たところいなかった。ひとりひとりが自分に出来る事を必死で考えている、気持ちの良い人々の集まりだった」と語っている。

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