この年の瀬に相次いで届いた訃報は我々の心に大きな穴を開けていった。振り返れば、2012年も多くの偉人たちが、たくさんの愛を残してこの世を去った。そんな故人へ送る敬慕のラスト・メッセージが、編集部に寄せられた。
女優・黒柳徹子(79)は、12月10日、前立腺がんにより逝去した俳優・小沢昭一さん(享年83)への想いをこう綴る。
《『若い季節』(’61年〜)のナマ放送で一緒に出ているとき、2人だけのシーンで突然、小沢さんはセリフを忘れました。それで私は、自分のセリフのあとに「でもあなたはこんなふうに思うんでしょ?」と言って小沢さんのセリフを言い、また自分のセリフを言い、そして「でもあなたは、こんなふうに言いたいのね、そうじゃない?」と小沢さんのセリフを言うというふうに、1シーン全部のセリフを私が言って差し上げました。そうしたら小沢さんは、そのときのことを最近まで「あのときは本当に助けてもらって、ありがとう」とおっしゃってました。
小沢さんのおうちは写真館で、ご両親がお忙しかったけれど、お父様は子煩悩でいらして。お正月に、凧上げの凧がどんどん、どんどん、遠くのほうに飛んで行ってしまったとき、自転車でずっと追っかけて取ってきてくれたという話をしてくださったことがありました。小沢さんの優しさはそういうところからきているのだと思います。
“中年御三家”はたいへん有名で、武道館でもどこでもいっぱいにした時期があって、いつもそういうときはハモニカを吹いていました。小沢さんのハモニカはもの悲しげで、また愉快で。これからはハモニカを聞くたびに小沢さんを思い出して、私は涙ぐむと思います。
「100歳まで生きる!」とはしゃいでいると「そのとき『ねぇ』と周りも見まわしても、もう誰もいないよ」と言って、私を泣かせた小沢さん。
人間って死ぬのね。本当に寂しくなってしまいます。》