今年もっとも日本を明るく元気にしたテレビ番組は?といえば、まだまだ年末まで間はあるが、NHKの朝ドラ『あまちゃん』と答える人がダントツだろう。人気の番組は必ずチェックしているという美輪明宏さんが、その人気の要因について分析してくれた。
「まずブームになったポイントは、方言が見直されたということ。方言には“情”があるんです。いまは全国的に方言がすたれて、死滅しつつあります。先日、故郷の長崎で番組のロケがあり、私の母校の学生さんに話しかけられたんですが、すべて標準語。しかも長崎弁のアクセントがまったくなかった」
その学生さんたちはふだんから使い慣れているように標準語でしゃべったようす。これは長崎に限ったことではなく、すでに日本中に広がっていると美輪さん。つまり、各地の方言がどんどん消え、日本は“無個性化”してきているという。
「そこへあの“じえじぇじぇ!”が来ちゃった(笑)。ドラマの方言を聞いて、みんなどこか懐かしく、逆に新鮮に感じて面白がった。そこには人の情もあふれています」
いまはSNSの時代。人と直接会って、皮膚感覚でコミュニケーションを取ることが少なくなり、これでは情が生まれない、と美輪さんは言う。
「ドラマでは、ズーズー弁をなりふり構わず使って、町内のみんなが余計なおせっかいをしているでしょ?1人の人間の私生活にあんなに口を挟むなんて、いまの時代じゃ考えられないですよ(笑)。昔の寅さん映画のよう。家族の1人が何かやると、町内の海女仲間や、観光協会の人や駅員までしゃしゃり出てくる……。『あまちゃん』は、まるで人情モノの現代版のようなドラマ。それが視聴者から共感を得たのです」