映画『くじけないで』(11月16日より全国ロードショー)で主演を務める八千草薫(82)。彼女にとって、実に58年ぶりの主演作品となる今作は、98歳で《私 辛いことが あったけれど 生きていてよかった あなたもくじけずに》などの詩を収めた処女作『くじけないで』を出版した、詩人・柴田トヨさんの半生を描いた物語だ。
「重心のかけ方ひとつでも、難しかったですね。背中がまっすぐだと、いくら腰を曲げても年を取って見えない。だから、背中に綿を入れて、全体的に丸くなるようにしたんです。年を取るのは大変なことだと、しみじみ感じました」(八千草さん・以下同)
映画のなかではトヨさんを支える大切な思い出が、回想シーンとして効果的に挟まれる。それに重ね、八千草さん自身を支える“人生のシーン”を尋ねると。
「小学校の2年生のとき、小児結核になって、祖母のところに預けられたんです。母が週に1度会いに来てくれるのがいちばんの楽しみで。帰るときはいつも、駅の踏切まで送っていくんです。ある日、母が渡ったところで電車が来てしまった。それが通り過ぎたら、母の背中が遠くなっていて。そのときの悲しさは、いつまでたっても思い出しますね」
おっとりと語る八千草さんは、動作のひとつひとつが本当に優雅で、つややかな肌にはつい見入ってしまう。美肌と健康の秘訣を聞いてみた。
「いろいろしすぎないほうが、私にはいいような気がするんです。洗顔後は化粧水を使って、下地クリームとお粉を。今も、ファンデーションはつけずに、BBクリームだけです。結局、面倒くさがりなんですね。健康の源は、毎朝の犬の散歩でしょうか。名前は『ヴェルディ』。イタリア語で『緑』という意味。シェルティで、まだ1歳の男のコだから、のんびり散歩できないの(笑)」