本誌連載「中山秀征の語り合いたい人」第4回の対談相手は、人生論『野心のすすめ』が大ヒット中の作家、林真理子さんです。その対談ダイジェストのパート2は「子ども時代について」です。

中山秀征(以下・N)ところで、林さん自身はどういうお子さんだったんですか?

林真理子(以下・H)勉強はそこそこで、ちょっと夢見がちな、妄想の多い子だったかもしれないです。本を読みだすと物語の世界にどっぷり入ってしまって。『風と共に去りぬ』なんかを読んだりすると、自分がスカーレット・オハラになった気持ちになっていました。

N 実際の恋愛はどうだったんですか?自分から言うほうですか?

H 自分からは言わないですね。そこも妄想というか、勝手に「相手も私のことが好きなんだ」って思っちゃうんですよ。

N「私がこんなに好きなんだから、あなたも私を好きなはず」という世界観を作っちゃう?

H はい。今で言うとストーカー体質。ひとつ間違えたらって考えると怖いです。若いころの話ですけどね。

N でも、人生には勘違いや思い込みが必要なときもあるかもしれませんね。その思い込みの力が林さんをこうして作家にさせたのかもしれないし。勘違いや思い込みが個性を作るっていうこともあるかもしれません。

K 恋愛の勘違いは怖いですけどね(笑)。この間、ウチの娘が「ママってパパが初めての彼氏?」って聞くから「そんなことないよ。いっぱいいたよ。ママ、モテたから」って言ったら、「ふーん、それって勘違いじゃない?自分だけが付合っていると思ってたんじゃないの?」とか言われて。

N アハハ。鋭いこと言いますね。小説に書かれているかもしれませんけど、理想の恋愛ってあったりしますか?

H 新幹線で隣になった人と……、なんていいなとか思ったりしますけど、この年令になるとそういうのもあまりなくなってきますね。女の作家ってだいたい、現在進行形の恋愛を書くというより、過去の恋愛を膨らませたり、大きくしたりして恋愛小説を書いているんじゃないかな。

N そして妄想、と。

H そうそう。

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