「一人ぶちは食えなくても、二人ぶちなら食える――、落語によく出てくる台詞です。1人で食べていくのがしんどくても、2人でならなんとかなってしまう。そんな夫婦、素敵だなって思いますね」
3カ月前、『ごちそうさん』のインタビューで理想の夫婦像を尋ねると、東出昌大(26)は落語になぞらえてそう語ってくれた。父親ゆずりの落語好きで、悠太郎の役作りのために、大阪の天満天神繁昌亭でチケットのもぎりバイトまでしたほどだ。そして、この日は寄席へ。
「今年初めての寄席です。あぁ、ホント楽しみだな……」
墨で書かれた根多(ねた)帳「演題大宝恵(おぼえ)」をめくりながら、自然と顔がほころぶ。これを見れば、昨日までの演題がすべてわかるのだという。
「(古今亭)菊之丞師匠の落語を楽しみに来ました。僕、古典が大好きなんです。昔の人の大らかさとか気風のよさとか、人情話もいい。『二番煎じ』『芝浜』……楽日なので、きっと大ネタをやりますよ。東京の寄席は食べたり飲んだりできるので、僕もふだん、お酒を飲みながら鑑賞します。酔っ払ってゲラゲラ笑っていますよ(笑)。僕自身は、下町の演芸場で味わうライブ感みたいなものが好きですね」
ドラマ『ごちそうさん』もラストスパートに突入。初めて父親役に挑戦したわけだが。
「昔の父親像というか、威厳ある姿を見せたいと思って演じました。落語にも通ずるところがあると思うんですが。夫としても同じことで、悠太郎が亜貴子との浮気を疑われたとき、『僕が帰ってくるところはここしかない!』って半ギレ状態でめ以子のもとへ帰ってきた。きっぱり言えるところが男らしいですよね」
そして’14年。次なる目標はどこに定めているのか。
「今年は本当に仕事をがんばりたい。先日、『仕事は生き方と人生の証明なんだ』という話を聞いて、そのとおりだ、と。今はとにかくがんばって、いつか、自分の人生を証明できたらいいなと思います」
この日、昼夜公演を通して、1日中寄席で過ごした東出。昼公演のトリで登場した菊之丞は、夫婦愛を描いた『芝浜』を披露し、会場は拍手喝采だった。