本誌で好評連載中の「中山秀征の語り合いたい人」。第15回目のゲストは、歌舞伎役者の中村勘九郎さん(32)です。亡き父・中村勘三郎さんの“教え”についてお話いただきました。
中山「5歳で初舞台を踏まれたわけですけど、小さいころはどういう稽古をされていたんですか?」
勘九郎「全然覚えていないんですけど、たぶん父にセリフを聞いてもらって、『そこをもう1回!』とか言われて直してもらっていたんだと思います。ただ、そのころから一度言われたことが直っていなかったら、ものすごく怒られたことは覚えています。だから今も常に、一度言われたことは必ずやるようにしています」
中山「その『一度で理解しろ』が、勘三郎さんの教えなんですねえ。お父さんは、どんなときでも常に『全力!』という方でしたもんね」
勘九郎「子どものころに、家でたくさんの人がワイワイ飲んでいるときに、明日も学校があったので先に寝たんですね。そしたら翌日父に『お前、あそこで芝居の話をしてるんだからあの場にいなきゃ駄目だよ』って言われたことがあって」
中山「あの場はただワイワイ飲んでるだけじゃないんだぞ、と」
勘九郎「実際、その場で話していたことが現実に舞台になることもありましたし、物が生まれるゾクゾクする瞬間にたくさん立ち合えましたね」
中山「飲んでいようと何をしていようと勘三郎さんには“無駄な瞬間”ってものがないんでしょうね。『ウチくる!?』に出ていただいたときも、機材セッティングでできた30分の空き時間も休んだりせず、常にみんなといて、みんなとしゃべって。たしかその30分に4人くらいでテキーラのボトルを1本空けたんじゃなかったかな?」
勘九郎「え? ホントですか!? やっぱりあの人、頭がおかしい! アハハ」
中山「お酒で思い出しましたけど、この間、お父様の行きつけだったバーでたまたま七之助くんに会って。七之助くん、カウンターに勘三郎さんの写真を置いて飲まれていましてね」
勘九郎「父が好きだったところとかは父も連れていきたいというか、いてほしいっていうのが僕たちにはありますね」
中山「七之助くんが、勘三郎さんと一緒に飲んでいるように僕には見えました。短い人生ではあったかもしれないですけど、太く、愛情で結ばれた親子だったんだな、って。そんなことって普通、親子でもなかなかできるものじゃないですよ。すごく素敵な光景でした」
勘九郎「ありがとうございます」