本誌で好評連載中の「中山秀征の語り合いたい人」。第15回目のゲストは、歌舞伎役者の中村勘九郎さん(32)です。2人の息子たちへ思うことなどをお話いただきました。

中山「今後は、勘九郎さんが勘三郎さんをまねたように、お子さんたちが勘九郎さんをまねしていくというか、目指すようになるわけですよね? ご長男は3歳だとそろそろ初舞台ですか?」

勘九郎「なぜ僕の初舞台が5歳って少し遅かったかといいますと、役者としてのスタートラインとなる初舞台を兄弟同時にさせたいという父の思いから、七之助が3歳になるのを待っていたからなんです。うちも、七緒八(長男)と哲之(次男)の初舞台を一緒にできればいいなって思っています」

中山「ということは、息子さんたちを舞台で見られるのはあと2~3年後ですか」

勘九郎「ただ七緒八がそこまで待ちきれるかどうかなんですよ。朝は『刀持ってきたよー』って起こしにきて、そのままそこで立ち回りを始めるような子で。0歳の弟の横に刀をおいて『ノリ、マッタカトオリね(『真田十勇士』で相手役だった松坂桃李)』って言って、2人で戦ったりもしているんですけど、そりゃあもう一方的にボコボコで(笑)」

中山「赤ちゃん相手に立ち回って。アハハ。でも、そうやって遊びながらのうちになじんでいくんですね。勘九郎さんや七之助さんにもそういう遊びの延長みたいなところはあったんですか?」

勘九郎「はい、ありましたねえ。雪が降れば家の前の神社へ七之助と刀を持って走っていって、赤穂浪士の討ち入りの場面をやったりして」

中山「はあ。子ども心に忠臣蔵のその絵がもう頭の中にあるんですねえ。それって環境なんですかね?」

勘九郎「そうかもしれないですね。家で僕が芝居のビデオを見ていると、おとなしく横で見ていますし、ツケの音も大好きですし。取材で『なぜなろうと思ったんですか?』とか『やめようと思ったことはないんですか?』とか聞かれても、ただ好きでやっていたことだったので、うまく答えられなかったことがよくあって。子どもを見ていると、こいつもいつかそれを聞かれたときは困るんだろうなあ、なんて思ったりします」

中山「日常のどこかには、ずっと芝居があるわけですもんね」

勘九郎「そうですね。僕が父をずっと見ていて、父になりたいと思いながらやっていたように、今度は長男が同じように僕を見ているのかもしれないです。僕がそこにいるのに僕の役を全部やりたがりますから(笑)。それがうれしい反面、彼らに憧れられる役者になっていなくちゃいけないって、大きなプレッシャーでもあって」

中山「そうやって受け継がれていくんだなあ。最後に、これからの歌舞伎はどうなっていきますか?」

勘九郎「父は『危機感を持たなくてはいけない』と言いつづけていました。これだけ娯楽があふれている今、それでも『やっぱり歌舞伎はすごいんだ』と思ってもらえるようなものを作りつづけていかないといけないと思いますし、歌舞伎座で12カ月いつでも見られるということを、もっと知ってもらわないといけないなと思いますね」

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