近年、舞台の演出にも勢力的に取り組んでいる錦織一清(49)が、7月公演の舞台『出発』の演出を手掛ける。「家族の絆」が主題の本作にちなみ、近年、家族をテーマとした作品を発表し続けている山田洋次監督との対談が実現。『男はつらいよ』の大ファンである錦織だけに、寅さんトークで盛り上がった。

山田「寅さん映画で家族はしょっちゅうけんかするけど、役者は真剣に演じていますからね。今の時代は『おめえなんて出ていけ』『あー、それ言っちゃおしまいよ』なんて言い争うのは珍しい。むしろそういう人間関係が憧れなんじゃないかな」

錦織「僕は16歳で家を出て合宿所の入ったので、もっと親に迷惑をかけたかったし、おやじとけんかしたかったですね」

山田「もっと家族に迷惑をかけたかったという気持ちはよくわかるなぁ。寅さんは家族に迷惑ばかりかけるけど、人間もともと、面倒くさいもの。トラブルメーカーも必要なんだ。その人を巡ってみんながもめたりけんかしてイライラしたりすることを含めて、人間が人間らしくつながっていける。最近の世の中は無駄なものを排除するから、家族や地域までが、効率主義の味気ない集団になっていて、人と人とが織りなすパワーが消えていくような気がしてならないね」

錦織「おやじは印刷工場の職人、おふくろは看護師だったから、芸能界での悩みも相談できなかった。もしあのころに戻れたなら、心配をかけてみたいですね」

山田「寅さんは妹に心配かけっ放しだものね。彼にとってさくらは観音様みたいな存在です。女神(ミューズ)、心のよりどころ。さくらという女は地に足がついていて、自分を大切にして生きながらも、相手が何を求めているかがよくわかる気働きのする女性なのでしょうね。誰もがこの人に相談をもちかけるし、さくらも人に相談する。大切な問題について、人に相談できるということは、その人が一人前だということじゃないのかな」

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