隔週連載“中山秀征の語り合いたい人”、今回は7大陸最高峰の最年少登頂を達成したアルピニスト・野口健さん(41)の登場だ。ここでは、世界遺産になった富士山への危機感を語る。
野口「もともと富士山は年間300万人くらいが山に入るんですよ。そのうち山頂に行くのが30数万人。世界遺産になる前から、実は完全にオーバーヒートしていたんですね。問題が山積みだったことも影響し、自然遺産にはなれず、文化遺産になったのですが、僕は『問題を1個1個クリアしていかないと、世界遺産にはなれない。だからルールを作って、改善をして、世界遺産を目指そう』とずっと言い続けてきた」
中山「そしたら、解決する前に昨年、世界遺産になっちゃったんですね」
野口「僕はずっと富士山のゴミ拾いをしていたので、僕が喜んでいると思っている人が多いと思うんです。でも、僕はさまざまな問題に対して、人々の関心がいかなくなっちゃうと危機感を抱いているんですよ。しかも、マスコミが昨年、全然報道しなかったのが『富士山は、条件付きの世界遺産だ』ということ」
中山「その条件っていうのは……?」
野口「人が多すぎること、環境問題、景観の問題、誰が富士山を守っていくのか、その責任者などです。だから、ユネスコから『日本人がどうやって富士山を守っていくのか、3年以内に方向性を決めなさい』と言われているんです」
中山「世界遺産にしてあげる代わりに、宿題があるってことですね」
野口「僕は登録された後に知ったんですよね。通常はどの世界遺産も6年に1回チェックを受けるのですが、富士山の場合は3年後。しかも条件が付いている。ユネスコも危機感を持っています。山中湖や河口湖でのジェットスキーやラブホテルの看板が景観に合わないとか、観光色が強すぎないかとか、霊峰富士と信仰の対象にしているならもっと静かな場所であるべきじゃないかとか。いろんな宿題があるのに、何一つクリアできてないんですよ。もう課題の提出までに2年を切っています」
中山「それをやらないと、3年後のチェックのときに取り消されることもあるってことですよね」
野口「このままいくと、まずは警告をうけるんですね。専門家の方に聞くと、警告はほぼ免れないと。それが何回か続いたときには取り消しもあるかもしれません」
中山「手放しで喜んでいるわけにはいかないですね。今なら間に合いますか?」
野口「間に合います。ですから、この事実を多くの人々に伝える必要があるんです」