「作品自体に賛否があるところが面白いな……って思い、今回の出演を引き受けました。映画では、私は30代から80歳までの役を演じているんですが、ほとんどノーメークに近い状態での撮影でした」
そう話すのは、女優・島田陽子(62)。来年4月公開の映画『塀の中の神様』で5年ぶりにスクリーンに登場する。同作は、詐欺罪で懲役15年の刑に服した宗教団体『法の華三法行』元代表の福永法源氏の半生をドキュメンタリーで描いたものだ。
しばらく彼女が映画などから遠ざかっていたのには、家庭の事情があったという。10年前に同居する実母が脳梗塞で倒れたため、療養のため長野県軽井沢で介護生活をしていたのだ。
「母は脳梗塞で2度、倒れました。幸い軽くて、状態も好転しています。トイレも1人で行けるし、ほんとにラッキーで。3年前からは母を連れて一緒に東京に戻りました。近くに妹が住んでいるので、半々でお世話をして、デイサービスやお泊まりサービスもうまく利用しながら、私は仕事をしています」
実母の介護で支えとなったのが、3歳年下の夫だ。彼女の出演ドラマで照明担当だった夫と20年前に結婚するとき、彼は島田の母との同居を快諾してくれたという。
「私が忙しくて買ってきたお弁当を母に出したりすると、『お母さんにそういうの食べさせちゃダメだよ』って。私が仕事で海外に長くいる期間などは、食事も全部作ってくれます。本当に感謝しています。たまに母に聞くんですよ、『いま幸せ?』って。『とっても幸せ』って言ってくれます。夫は不器用な人で世渡り下手で、会社でも意見を言えないようなところがある。でも少年みたいに心は純。そんな彼に何度もこれまで心をあらわれました」
“国際女優”として脚光を浴びた後、波乱の半生を歩んできた彼女。しかしネガティブな出来事が起きたときも「負けている場合じゃない。これは試されているんだ」と思うようにしているんだとか……。
「逃げれば逃げるほど問題は追いかけてくる。自分から追いかけるほうがいいんです。そうすると問題のほうが逃げていくんですよ」
穏やかな生活を取り戻したいまも、“国際女優”の負けん気の強さは変わらないようだ。