「『白岡あさ』を演じて感じたのは、ひとりの人間として未熟な部分がたくさんありながらも、素直な心を持って筋を通して生きることの大切さ。言葉にするとシンプルだけど、仕事や人に対してきちんと誠意を持って向き合うことは、なかなかできないですからね。そして物語が進み、大人になったあさは、さらに困難な場面に遭遇することになりますが、周囲の助言を聞きながら、前を向いて歩いてきます。私も一緒に勉強できたというか、ちょっとずつ成長できたかなと思います」
そう語るのは、NHK連続テレビ小説『あさが来た』の主人公・白岡あさを演じる女優・波瑠(24)。モデルとなった実業家・広岡浅子も“九転十起”を座右の銘にし、何度も失敗しながらも周囲の協力を得ながら、日本初の女子大学校や生命保険会社創立に尽力した女傑。
クランクアップ直前のあわただしい時間だったにもかかわらず、波瑠が本誌読者のために、あさと歩んだ“九転び十起きの10カ月間”の撮影を振り返ってくれた。
「包丁でおなかを刺されたあさの意識が戻らず、病室で夫の新次郎さん(玉木宏)が呼びかけるシーンがあるじゃないですか。実はあれを見て、すごく泣いちゃいました。私は本番では目をつむっていて新次郎さんの表情がわからなかったんですが、オンエアを見たら“ああ、旦那さまは、こんなにあさのことを大事に思っていたんだ”って伝わってきた。もう、それだけで泣けてきちゃったんです」
波瑠にとっては、どのシーンも思い入れが強くて、お気に入りを絞ることは難しいと言うが、肉体的にもっとも過酷だったのは、迷わず炭坑でのシーンだと断言する。
「あのシーンは全部まとめて1週間で撮らなければいけなかったんですよ。朝の9時、10時から収録をスタートして、すごく遅い時間まで……。1日の撮影量がすごいことになってしまいました!」
ドラマの7〜12週は、あさが手がけた炭坑事業がようやく軌道に乗り、千代を出産するまでが描かれているが、そこに至るまでには、炭坑夫たちの前で“お守り”にもらったピストルが暴発したり、支配人と相撲を取ったり、新次郎や五代が応援にかけつけるなど、名シーン満載だ。
「それに加えてキツかったのはスタジオの空気の悪さ。鼻をかんだら、鼻水が真っ黒……という感じで(笑)」
現場は炭坑の雰囲気を演出するため、砂埃を機械で起こしていたとか。
「ホコリっぽくて、ついにはのどを痛めてしまいました。炭坑シーンはセリフが多いから『このままじゃのどが大変なことになっちゃう!』って、時間さえあればうがいをしていました。のど飴も手放せませんでしたね」