「テレビドラマで主演はしたことがあるんだけど、映画は初めて。主演ということにそれまで特に何かを感じていたわけではなかったけど、試写会のあとになって『お客さん、来てほしいな。来てくれなかったらどうしよう』とか、初めて映画で主役を演じることの意味や重さがわかりましたね。責任感をじわじわと今も感じています」
そう語るのは、映画「つむぐもの」(有楽町スバル座ほか公開中全国順次ロードショー)で、役者人生50年にして初の映画主演を務めた石倉三郎(69)。演じる役柄は、不遜で偏屈な性格の和紙職人・剛生という、まさに石倉らしさを感じさせるものだ。そんな剛生は脳腫瘍が原因で半身まひになり、介護が必要な体になってしまう。
「自分の身近に老老介護や介護離職といった状況の人がいるから、せっぱつまったものとして感じました。でも、絶対に自分は介護を受けたくないと思いましたね。でもなぁ、こればっかりはそう簡単なことではないんだろうな」
体が不自由になった剛生のもとに、韓国からヨナという女性がヘルパーとしてやってくる。このヨナ役を、韓国の若手実力派といわれるキム・コッピが演じた。
「感性というか芝居に対する姿勢がすごい女優さん。脱帽ものですね。俺は韓国の歌が好きで簡単な単語も知っているから、韓国語を使うと喜んでくれてね。なんで知ってるの?って」
本作はほかに、介護業界の過酷な現状や、外国人労働者などについてもふれている。石倉は、最後に本誌にこんなコメントを残してくれた。
「『女性自身』さんて、俺が小学の5年か6年のころにできたんだよね。初めて見たときに『女性自身?何、このタイトル』って散々不思議に思ってね。それで……。あ、作品のPRね。この映画をご覧になってあえて理解しないでほしいです。感じてほしいんですよね。人と人の優しさ、なんだかんだいって、人っていいなというところを感じていただければうれしいです」