第1週(4月4日〜)の平均視聴率が21.7%(ビデオリサーチ社参照)と、好スタートを切ったNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』。
ヒロインの小橋常子(高畑充希)が、結核を患っていた父・竹蔵(西島秀俊)と死別し、残された母や2人の妹たちのために“とと(父親)姉ちゃん”になると誓うところで物語は次の展開へと向かう。これまでの放送で視聴者を夢中にさせたのは、竹蔵の愛情あふれる“名セリフ”だったという声は大きい。
物語のモチーフとなったのは『暮しの手帖』を創刊した大橋鎭子さんの人生。鎭子さんが“父親から受け継いだ教え”参照しながら、竹蔵が残した名セリフを、一つひとつ振り返ってみたい。実際のエピソードに関しては、鎭子さんの親族で暮しの手帖社社長の坂東宗文さんに思い出を語ってもらった。
■名セリフ1「当たり前にある毎日でも、それはとっても大切な一瞬の積み重ねだと思っています。そしてそれは、いつ失うことになるかもわからない」(3話)
小橋家の家訓“朝食は家族皆でとること”を守ろうと、夜を徹して仕事をしようとする竹蔵。それを見て心配する妻の君子(木村多江)に、竹蔵が語った、家族への愛情が詰まった言葉だ。
「ただ鎭子さんの母・久子さんは、(父・武雄さんが結核を患い療養中は)娘たちに結核が感染しては大変と、父親とおかずを分け合うことを禁止していました。そんな“寂しい食卓”の思い出があったから、鎭子さんは毎週末、大勢の家族と食事をするのを楽しみにしていました。大皿料理をみんなでつつき合う和やかな“日常”を大切にしていたのです」(坂東さん・以下同)
■名セリフ2「安心してください。ととが責任をとりますから」(2話)
取引先の名画を墨で汚してしまった三女の美子。それを助けようと常子と鞠子が修復を試みるが、汚れは広がり、結局、母の君子にバレてしまう。だが、竹蔵は、皆を叱りつけるどころか、姉妹で助け合ったことを褒めた。鎭子さんも、暮しの手帖社とその社員たちを、生涯をかけて守ろうとした。
「会社が経営難に陥ったときがあって、義父が『今なら社員に多少なりともお金を残せるから、会社を畳むのも選択肢の一つ』と進言。でも鎭子さんは『私が死ぬまで社長として会社を守っていく』とキッパリ答えました」
■名セリフ3「ととがいなくなったら、かかは一人で大変だろうと思うんです。だから常子がととの代わりになってかかと鞠子(相楽樹)と美子(杉咲花)を守ってやってほしいんだ」(5話)
死を覚悟した竹蔵は、常子を寝室近くに呼び、自分の代わりに皆の“ととになってほしい”と。自分の病いよりも、これからの家族の行く末を心配していたのだ。同じように10歳の鎭子さんも、病室の枕元で父から家族を託されている。
「普通なら喪主は母親ですが、あえて久子さんは一歩退き、鎭子さんに任せました。鎭子さんは“自分が強くなきゃいけない”と自覚したことでしょう。女ばかりの家が厳しい世の中を生きていけるのかと、武雄さんは、心配でたまらなかったと思います。また娘の成長を見られないまま死んでいくという悔しさもあったでしょうね」