「私たちには10年の歴史があり、それをすべて演技につぎ込みました」−−。映画『白い帽子の女』(9月24日公開)で、主演、監督、脚本、そして製作と“1人4役”を務めあげたアンジェリーナ・ジョリー・ピット(41)。同作品では、実際の夫でもあるブラッド・ピット(52)と夫婦役を演じている。2人の共演は、出会いのきっかけとなったヒット作『Mr. & Mrs.スミス』(’05年)以来、じつに10年ぶりのことだ。
アンジーが演じるヒロイン・ヴァネッサは、人生の思いがけないある不幸をきっかけに、精神のバランスを崩し、夫であるローランド(ブラッド)との間に心の距離が生じてしまう。絆を取り戻すか、別々の道を歩むか、の瀬戸際に直面する夫婦。アンジーは、この作品で“人間関係の両極”を描いたと振り返る。
「人間は、ある人を絶対的に、狂気に至るまで愛することができると同時に、その人を殺したいとも思う。その人といると浮ついた気持ちになり、ばかげたことをしてしまうこともあれば、同じ人と一緒にいて憂鬱になったり、落ち込んだりもします。人間関係には波があるのです」
ローランドがヴァネッサに優しく寄り添うように、映画の製作にあたって、ブラッドはアンジーを公私にわたって全面的にサポートしてきたという。彼はアンジーのシナリオに込められたメッセージについて、次のように語る。
「“本当は愛している誰か”に対する感情の妨げになっているものが何なのか、この物語はそれを解き明かすパズルなんだ。その原因の多くは過去の不確かさにある。何かを求めすぎ、それを失うのが怖いんだ。この物語にはそうしたことすべてがある」
監督としてのアンジーのアイデアの軸にあったのは「自分が選んだ誰かにこだわる」ということ。そこには彼女の次のような結婚観があった。
「時に結婚は簡単なものではありません。でもあなたは選択し、歴史を築き、なぜこの人を選んだのかを知ります。そこには慰めがあります。カップルの一方がたやすく諦めてしまうこともあるのは事実で、そういうときこそ他方がふんばらなくてはいけないのです」
こうした繊細な愛の形を描いていくことは、「挑戦的な作業だった」アンジーとブラッドは声をそろえる。
「自分の夫への親しい感情のすべてを使って挑戦し、お互いを刺激しながらよいものにしていくことができるなんて、アーティストとしてすばらしいことだと思いました。お互いに、これまでにないような何かを引き出し合うんですから」(アンジー)