梅雨晴れとなった6月15日。神奈川・八景島シーパラダイスに、仲むつまじく手をつなぐひと組の夫婦の姿があった。肺腺がんの手術からわずか16日。中村獅童(44)は妻の沙織さん(33)と一緒だった。
施設内を散策しながら、獅童は自分の体より、沙織夫人の一挙手一投足を注意深く見守っていた。少し重たそうに、段差に気をつけながら歩く沙織さん。獅童がいつくしむように見ている彼女のおなかには、新しい命が宿っていた――。
「獅童さんはこの9日前、6月6日に東京都内の病院を退院なさいました。その日は都内の名刹(めいさつ)で、ある伝統芸能の家元の方の発表会があったのですが、獅童さんご夫妻にも案内状を送っていました。入院中と聞いていたので、いらっしゃれないと思っていたのです。ところが、沙織さんは獅童さんを自宅に送り届けた後、わざわざ来て下さいました」(歌舞伎関係者)
その席で、沙織さんのおなかの膨らみが話題になったという。
「当日は松竹の社長や財界の重鎮、日本舞踊の大御所に俳優さんら、そうそうたる面々がいらしていたので、直接本人に尋ねるような下品なまねはできません。何より本当におめでたなら報告があるだろうと、そこで話は終わったんです」(前出・歌舞伎関係者)
松竹関係者は、こう語る。
「妊娠後、獅童さんのがんが発覚したので、発表することを控えていたのではないでしょうか。歌舞伎は世襲の世界。ましてや、主役を演じる大きな名前を持つ役者さんなら、芸を継いでくれる子供が欲しいのは当然でしょう」
現在、獅童はリハビリに励む日々を送っている。彼に課せられた最初の試練は、肺に残った切除時に漏れた血を吐きだすこと。
「縫ったばかりの傷だって痛いのに、薬を吸入して無理に咳き込ませ、吐き出す作業を毎日繰り返すんです。健康な人でもしんどいと思います」(医療関係者)
前出の歌舞伎関係者はこう語る。
「来月には記者会見を開いて、本人の口から舞台への復帰を報告することになると思いますが、8月以降で無理のないお役からとなるでしょう。もちろんわが子の誕生を見届けてからの復帰も考えられます。妊娠がわかって、喜んでいた矢先にがんが見つかったわけですから、『この子に会いたい、俺は生きる!』という気持ちは、つらい闘病の支えとなっていたはずです。“誕生の瞬間”にはきっと涙が止まらないでしょう……」
6月15日、「海の動物たちのショー」を見終わった2人は、夕陽が傾くなか、ゆっくりと園内を歩いていた。