3月21日、岩下志麻(77)が東京・八重洲ブックセンターで「美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道」の出版記念トークショーとサイン会を行った。60年の女優生活を記録した同書について、岩下はしみじみと語った。
「よくやってこられたなと思います」
岩下がそう思うのも、無理はないのかもしれない。岩下はもともと女優になりたいと思っていたわけでなく、“アルバイト気分”で女優業を始めたという。そして映画監督・篠田正浩(87)と出会い、66年に結婚。出産も経験している。
だが出産後、「私は女優をやっていていいのか」と迷うこともあったという岩下。「子どもを犠牲にしてまで女優を続けていくべきか」と悩んだ挙げ句“鬱状態”にもなったと、14年に開催された映画イベントで明かしている。
「子どもを置いて仕事に行くことについて悩んだ時期が2年ほどあったでしょうか。鬱状態になっていたと思います。『はなれ瞽女おりん』は6カ月ロケだったので、子どもを置いていかなければならない辛さを背負って演じきりました」
そんな母であり妻であり、女優である岩下を支えたのは、夫の篠田だという。「家庭は休息の場でなくてはいけない。たくさん休息して現場には元気で行ってほしい」という夫のお陰で、岩下は「仕事に没頭できた」と明かしていた。
さらに岩下が自信喪失のあまり女優を辞めようかと悩んでいたときも篠田は“女優・岩下志麻”を思い、声を掛けてくれたそうだ。
「おまえは女優をやっているときが一番輝いている」
紆余曲折があり、60周年を迎えた岩下。80歳を前にして、同サイン会ではこんな“夢”を語っていた。
「あと1本、燃え尽きる映画をやりたい。グロリア・スワンソンの主演で、女優のなれの果てを描いた『サンセット大通り』のような作品をやりたい」
支えてくれる夫とともに、岩下はその夢を追い続けている――。