「家族は僕に興味がないんですよ(笑)。『真田丸』も僕が『演技、どうだった?』ってしつこく100回も聞くから、めんどくさがられているんでしょう」
念願のベストジーニスト賞に輝いた授賞式の翌日、本誌の緊急インタビューにそう答えたのは、いま“旬”の俳優・草刈正雄(64)だ。受賞について「ご家族もさぞ喜ばれているのでしょう」と聞くと、「全く反応はないです」と即答。ところが、マネージャーが草刈の妻に楯と賞状を見せると、「良かったね~凄いね~」と喜んでいたという。そう聞くと「僕には何も言ってくれなかったけど、実は喜んでいてくれていたんだ!」と思わず笑みをこぼしてみせた。
家族エピソードを楽しげに話す草刈は、9月25日放送のNHK大河『真田丸』で主人公・真田信繁(堺雅人)の父・真田昌幸役の出演を終えたばかり。“昌幸ロス”という言葉が生まれるほどの人気を博したが、その話題沸騰ぶりを本人はどう感じているのだろうか――。
「視聴者のみなさんの“昌幸ロス”もさることながら、実は僕が一番“昌幸ロス”かもしれません(笑)。大河は月曜がリハーサルなんですが、『みんなリハやってるんだろうな』って月曜がくるたび少し寂しくなるんですよ。スタジオ遊びに行こうかななんて思ったりね」
撮影が終わって心にポッカリ穴があいてしまうほど草刈が『真田丸』に熱中できたのは、堺雅人演じる信繁と、大泉洋演じる信之の“2人の息子”の存在が大きかったという。
「堺くんはとにかく真面目。緻密に芝居を考え、組み立てますからね。練りに練って本番に挑んでくる。感心しますよ。僕がざっくり考えるタイプだけにね(笑)。それに彼は主役なのに、僕らがそこまでしなくていいのにと思うほど、周りに気を使ってくれてね。スタッフ1人1人に声をかけ、みんなをまとめてくれていましたね。そんな主役がどんと真ん中にいると、やりやすかったです。それだけこの番組に賭ける彼の心意気が凄かったのでしょう」
いっぽう長男・信之役の大泉洋についてはこう語る。
「ざっくり型と緻密型、両方を併せ持っています。生真面目な役を見事にこなして、上手だなあと思いますよ。話もうまいし、物真似なんかをしてみんなを笑わせ、いつも場を和ませてくれました。そんな2人の息子たちにエールを送るとしたら、『最後まで真田丸を思いっきり楽しんでくれ』ということでしょうか。彼らがどんどん成長してゆく過程を見るのが楽しみです。男としてもますます成長していってほしいですね!」
“2人の息子”の父を立派に演じきった草刈だが、三谷幸喜脚本の長ゼリフを覚えるのは一苦労だったともらす。そんな大容量の脚本を頭に入れるための“草刈流ルーティーン”があるそう。
「朝は5時ぐらいには目が覚めちゃうんですよ。じゃあ走ろうってジョッギングから1日がスタートします。家ではどうしてもダラダラしてしまうので、セリフを覚えるときは、駅前の喫茶店へ。『カフェみたいな騒々しいところで集中できるのか』とよく聞かれますが、多少の雑音があった方がリラックス出来て長いセリフもスラスラ覚えられるんですよ。でも、そんなルーティンを続けてこれたのは、カミさんが作る朝食のおかげ。僕はこの顔に似合わず大の和食派。ご飯と味噌汁にアジの開きや漬物。そこに明太子なんてあれば言うことなしです。“愛妻朝食”を食べているときが一番幸せです。僕がブログにあげた朝食メニューをマネして作ってみたら旦那さんの機嫌が良くなったというファンの方もいらっしゃいました」
一見、アクティブな印象の草刈さんだが、実はインドア派と意外な一面も明かしてくれた。
「何しろ僕は“うち虫”ですからね。ヒマなときはお気に入りのソファに座って、テレビをボーっと見ていることが多いですね。外泊もめったにしなくて、大阪に行っても仕事が終わると真っ直ぐ帰ってきます。浮気?そんなもの絶対にありませんよ(笑)。カミさんは『たまにはゆっくりしてくればいいのに』なんて言ってますがね。やっぱりうざいと思われてるんでしょうね(苦笑)」
結婚28年目の現在も“おしどり夫婦”として知られる草刈だが、夫婦円満の秘訣をこう打ち明けてくれた。
「女性がリーダーシップを取ってくれたほうが家庭はうまくいくと思います。ちなみにうちはお小遣い制。僕が参謀・真田昌幸ならば、妻は大将・武田信玄ですよ。武田信玄公の言うことを聞いていれば間違いない(笑)。妻には感謝していますが、僕はサプライズなんかが苦手でね。実は結婚式を挙げていないんですよ。そこで(長女の)紅蘭が、3年前の結婚記念日に“サプライズ式”を挙げてくれたんです。ずいぶんしゃれたことをするなと感心しました。女房もウエデイングドレスにちょっと気恥ずかしそうで。でも嬉しそうでした」
草刈は昨年2月、長男の雄士さん(享年23)を事故で亡くしている。
「(息子が生きていたら)『真田丸』の芝居を『おやじ、良かったよ』って、言うかもしれませんね。男同士ですからね。息子もちゃんと見ていてくれたと思いますよ」
“昌幸ロス”を生んだ『真田丸』熱演の裏側には、頼りになる“信玄”妻をはじめ、愛する家族の支えがあったのだ――。