「登場人物の中で自分が演じた尾形はいちばん毒がないやつ。等身大の人物だからリアリティが感じられると思います。女性からは『こういう彼氏と付き合ってたわ』と思ってもらえる役だと思います」
こう語るのは、映画『愚行録』(2月18日公開)で、嫉妬心や腹にいちもつを抱えた登場人物の中で、いちばん“人がよさそう”な青年・尾形孝之役を演じる中村倫也(30)。本人も尾形のように、外見はふんわりとした印象を持つが、尾形との共通点をたずねてみた。
「女性が感情的になると怒らなくなるところ。僕、圧に押されて引くタイプなんです。火に油を注ぐことができない。そこは似ています」
これまで多くの作品に出演し、その個性を随所に残してきた中村だが、気がつけば役者生活は13年目。これまでをこう振り返った。
「決して順風満帆ではないですけど、わりと好きにやらせてもらっているなと。いろんな刺激をくれる共演者やスタッフさんの背中を若いうちから見ることができたなぁと思います。生きていると当然、課題や壁はありますよね。ここ10年は出会うべくタイミングに壁があった気がしますし、それを乗り越えるときに支えてくれる人がいたことに感謝ですし、その出会い運みたいなものだけは自慢が出来るんです」
壁を乗り越え、人との出会いを繰り返すうちに、いつからか若手実力派と呼ばれるように。そして、’14年には舞台『HISTORY BOYS』で読売演劇大賞優秀男優賞を受賞した。
「ここ数年で周りの評価が変わってきたなって。これからも一生懸命、やっていくだけだと思います」
昨年12月に30歳となり、役者としての未来にさらなる期待を抱く。
「30代からの10年は、役者として勝負の時期だと思うので、意識する部分はやはりあります。あとは、早く年相応に顔のシワがほしいです(笑)。眉間とかつるつるですもん。これまで若く見られる役が多かったので、年輪を刻んだ男の顔になりたいと思って日々生きています」