「昨年の7月に『デビュー45周年』を迎え、今年の1月25日には45周年の記念曲第2弾『みぞれ酒』をリリースしましたが、私の場合、45年の間に20年ほどお休みがあって。その間に、貴重な体験や勉強を数多くさせてもらいました。そういう意味では、芸能生活だけではないデビュー45周年ですけれども、それなりに充実した年月でしたね」
こう語るのは、歌手デビュー45周年を迎え、現在も精力的に音楽活動を行っている森昌子さん(58)。彼女は、’58年生まれで、栃木県宇都宮出身。’71年に『スター誕生!』(日本テレビ系)の初代グランドチャンピオンになり、’72年、デビュー曲の『せんせい』が大ヒット。’85年にはNHK紅白歌合戦の『司会とトリ』を務め、国民的歌手となるが、’86年、結婚のため引退。
「私がデビューした当時は歌謡界の黄金期。時代的にはとても恵まれていましたけれど、同世代の歌手は1人もいなくて、さびしい思いをしていました。でも、翌年、(山口)百恵ちゃんと(桜田)淳子ちゃんがデビューして。3人とも同学年ということでとても仲よしになりました。百恵さん、淳子さんとはいまも、たまにですけどメールをしたりして、お互いの近況を報告し合っています。それぞれ家庭を持ってからは会うことはありませんけど、たとえば、携帯(電話)で声を聞くだけでお互いにすっと昔に戻ることができる。それくらい私たちは密度の濃い時間を過ごしていたし、百恵さんと淳子さんとは『いまでも深い絆で結ばれている』と思っています」
結婚後、’88年に長男(28=ロックバンド『ONE OK ROCK』のボーカル・Taka)を出産。次男(27=会社員)、三男(23=ロックバンド『MY FIRST STORY』のボーカル・Hiro)の3人を育てながら’06年、20年ぶりに歌手復帰した。
「私は『普通のお母さん』でありたいと考えて、自分の歌を息子たちに聴かせたことは一度もありませんでした。その私に、息子たちは『お母さんの歌を聴きたい』と。それに、デビュー当時から私を応援してくださっていたファンの方たちからも『昌子ちゃん、がんばって』『もう一度歌ってください』というお言葉をいただいて『もう一度生まれ変わったつもりでやってみよう』と。そう考えて以前所属していた事務所の社長さんにご相談して、’06年の6月に再デビューさせていただきました」
昌子さんはこれまでの45年間をこう振り返る。
「山あり、谷ありの45年でしたけれど、学んだことのひとつは『出口のないトンネルはない』ということ。これは、いまだから言えることですが、苦境にあっても耐えて、がんばれば必ず道は開ける。また、平たんではない道を苦闘しながら歩いてきたから『いまの私がある』と思っています。45年の間に学んだことは、私の人生のみならず『歌』にも少なからず反映しているような気がします。コンサートでは、いまもセーラー服で『せんせい』を歌っていますし(笑)、『哀しみ本線日本海』や『越冬つばめ』も歌っています。でも、引退前といまでは歌い方が違うんですね。20代のころは、歌の主人公になり切って演じた、文字どおり『演歌』でした。いまは、主人公と距離を置いて、冷静に、客観視して歌えるようになりました。言い方を変えると、歌の主人公ではなく『語り部』として。このあたりを感じていただけるとうれしいですね(笑)」