ベネチア国際映画祭でも大喝采を浴びた北野武監督最新作『アウトレイジ最終章』(10月7日全国公開)。前作から5年の時を経て、ついにファイナルを迎える。裏社会に生きる男たちの中で、警視庁の刑事という役柄で登場するのが松重豊(54)だ。前作に続いての出演となる。
「出演者は、僕ですらどちらかというと若手の部類に入るほど。生きるか死ぬかを懸けた抗争の中で、諸先輩方のその覚悟の見せ方が半端じゃないと思いました。極限状態に追い込まれた芝居をどのシーンでも繰り広げているので、その緊張感をスクリーンで見届けていただきたいです」(松重・以下同)
松重演じるマル暴の刑事・繁田だが、前作『アウトレイジ ビヨンド』の台本では、当初、殉職する予定だったと衝撃の事実が語られた!
「台本上では死んでいたんだけど、撮っていくうちに現場で『繁田は生き残るかな』ってなった。そのあと監督とお会いしたとき、『繁田は次は県警本部長になっていると思うな』とおっしゃるから、あ、出世するんだと思っていたら、最終章も平のままだったんですよ。全然出世していないと思って(笑)」
作品の中で繁田はある決断を下すのだが、「僕には納得のいく流れでした」と語る。そのシーンの撮影中にはこんな出来事が。
「飲み屋から出てずっと歩くシーンでした。監督は隠れているから周りの人は何の作品を撮っているかわからない。店を出てカメラから見えなくなるまで歩いていったら『孤独のグルメだ』って言われて。いや違うよ、そもそも『孤独のグルメ』、こんなに大人数のスタッフで撮影していないしって思いましたけど(笑)」
この日は別人とも思える白髪姿で現れた松重。役作りのためだという。
「今度出る映画で白髪にしてくださいと言われて若いころから染めていたのを20年ぶりぐらいにやめてみたら、真っ白だった。はぁ、じじいなんだなって思ったけど、これならイメージの違う役がやれるかなと思いました。これからは、年寄りキャラとしておじいちゃん役などやっていけたらいいなと思います」
188センチの長身・強面といつもの厳つい雰囲気から一転、終始穏やかな表情と軽妙な語り口。ずっと話を聞いていたくなる人だ。