「休みの日は早起きし、7時には駅へ。それから行き先を決めずに電車に乗ってしまう。クルマでも高速に乗って、いつのまにか新潟の近くとか。道の駅で特産物をつまみ、温泉場で風呂につかって……」
そう語るのは、端正な顔立ちと美しいテノールで“ミュージカル界のトップスター”と呼ばれる実力派、石丸幹二(52)。人気ドラマ『半沢直樹』で半沢の敵役を演じてお茶の間でもブレークした、劇団四季出身の俳優だ。
最新作はミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』。物語の舞台は18世紀末のフランス。恐怖政治家で革命の指導者ロベスピエール率いるジャコバン党が、貴族たちを次々とギロチンにかけていた。イギリス貴族のパーシー・ブレイクニー(石丸)は、断頭台の露と消える無実の貴族たちを救うべく、妻マルグリット(安蘭けい)にさえ内密に秘密結社を立ち上げる。
「作曲のワイルドホーンが『コメディだよ。革命に対し動こうとするイギリス貴族を、アメリカ人がエンターテインメントに描いてる話だから』って。他国の話だからこそ楽しめる。そうか、コメディとして演じていいんだな、と」(石丸・以下同)
たとえば『レ・ミゼラブル』はフランス革命をフランスの民衆側から見た作品。けれど、本作は同じ革命をイギリス側から見て、巻き込まれてしまった貴族たちを救済する話。’16年秋の初演は好評で、チケットは入手困難だった。
「歴史って違うアングルの視点から見ると、見え方が異なってくる。いっぽうで、いつの時代も世の中は同じだな、とも思える。演劇には社会を映す一面があり、この作品が見せる当時も今も危機感はなんら変わりがなく、古今東西ピリピリした中でみんな生きてることを実感します。コメディなドラマから時代が透けて見えると思いますよ」
着付けに何人もの手を借りる絢爛豪華な衣装と、メロディアスな楽曲でも観客を魅了するが、演者にとっては体力を消耗する作品だという。
「年齢を重ねると体力的にどんどん難しくなっていくので、一日でも早いうちに再演できて助かります(笑)」