「もう、ひとつの街ができあがっていて、セットとは思えなかったです。現実味がなかったというか。唐の時代がそこにあったので感動しました」
そう話すのは、映画『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』(2月24日全国ロードショー)主人公・空海を演じた染谷将太(25)。本作を見れば、まず豪華絢爛な映像世界に魅了されるはずだ。東京ドーム8個分の敷地を利用し、建築に6年の歳月をかけた唐・長安を再現したセットには、感嘆の声しか出ない。
CGを多用せず、セットの木は本物を植え、建物は基礎工事から始めているという。染谷も、そのスケールに驚きを隠せなかったようだ。
「中国のキャストの方とかに『中国映画っていつもこんな感じなの?』と聞いたら、『いや、これはチェン・カイコー監督ならではの特別な現場だ』とおっしゃっていました」(染谷・以下同)
メガホンをとったのは、カンヌ国際映画祭パルム・ドールなど数々の賞を受賞している巨匠チェン・カイコー。今作は監督からの指名により主役の座を射止めた。
「監督の口から自分の名前が出るのが光栄でしたし、まさか監督の作品に参加できるとは思っていなかったので、最初はどっきりじゃないかと思ったぐらい(笑)。でも、準備が進むにつれ、現実味を増してきて、大量の中国語のせりふが届き、脂汗をかいてひやひやしたまま中国へ行ったら、現場には唐の世界が広がっていました」
物語は遣唐使として渡ってきた空海(染谷)が、詩人の白楽天(ホアン・シュアン)とともに唐の首都・長安を揺るがす巨大な謎に挑むというもの。空海という偉大な人物を演じた感想をこう語る。
「何にもとらわれず、物事の芯の部分を見据えているといいますか、そういう部分は、自分もそうありたいと思わされました。物事を俯瞰するにも単純に俯瞰するわけではなく、とても深い見方をされる。何十年修業したとしても、自分には到達しえないなと」
これまでにも錚々たる監督のもと映画出演を果たしてきた染谷だが、意外にも本作が海外映画初参加・主演になる。
「映画をつくるという行為に、国境、国籍は関係ないということを改めて感じました。国内外関係なく、これからも頑張っていくだけです」
多弁に語るまなざしで、どの作品にも存在感を残してきた染谷。今回の空海も、その魅力に満ちあふれている。