「上川隆也さんは素敵な俳優さんだなと思っていたので、今回の共演がうれしいです。私は(劇中で)車いすに乗っていることが多く、執事の上川さんはいつも後ろにいてお顔があまり見られないの。ときどき前にいらして、お顔を見ると、『やっぱりステキだわ』と思いますね」
はにかむようにほほ笑むのは、八千草薫さん(87)。4月13日にスタートした金曜8時のドラマ『執事 西園寺の名推理』(テレビ東京系)で、上川隆也演じる執事の西園寺がお仕えする、優雅で上品な“奥様”の伊集院百合子を演じている。
ドラマの会見では、初共演となる主演の上川が、「“奥様”の八千草さんのかわいらしさをぜひ見てほしい」と、八千草さんの愛らしさを絶賛。
八千草薫さんは’31年生まれ。戦後、宝塚音楽学校に入学。宝塚歌劇団の清楚で可憐な娘役として大人気となり、映画界にも進出。昨年、女優デビュー70年を迎えた、日本が誇る大女優だ。
’07年に、50年連れ添ったご主人(映画監督・谷口千吉さん)を見送ってからは、一人暮らし。自宅では、イーゼルに飾られた大きな旦那さんの写真に「おはよう」と、毎朝の挨拶を欠かさない。夫が亡くなって11年。今、「老い」について、どう感じているか聞いてみるとーー。
「年を取っていいことは、そんなにないですよね(笑)。ある程度の年齢までは、年を重ねるのは、人生を深く知ることもできますし、とてもいいことだと思います。私がいちばん感じるのは、肉体的なことですよね。これまで、さっと動いたりといった、今までできていたことができなくなったりすると、やはり悔しいわね(苦笑)。『これもできなかった』と、悲しくなることもあります。でもそれはしょうがないですから、受け入れることも大切ですね。『大正生まれは強い』といわれますが、『昭和の生まれ』も強いんですよ。戦争の時代も、当時はつらいとは思ってはいませんでした。我慢強いし、やろうと思ったことはやり通す強さもありますね」
80代後半の今も多忙な日々が続く。今回のドラマに続き、8月には人生の終盤を迎えた夫婦がこれまでを見つめ直し、家族の絆の大切さを描く舞台『黄昏』で主演を務める。秋からは倉本聰作『やすらぎの郷』の続編『やすらぎの刻〜道』(’19年放送)の撮影も。
「仕事がこんなにも長く続くとは思ってもいなかったです。でも仕事をこんなふうにいただけるのは幸せなこと。体が動く限りは女優として、一生懸命演じていきたいですね」
最後に「今後してみたいことは?」と聞くとーー。
「プライベートで自然のあるところに旅行に行きたいです。箱根は近いけど、いいところですね。海外はあまり行きたいとは思いませんが、昔、イタリアに半年間いたことがあって……」
20代のとき、『蝶々夫人』(’54年日伊合作映画)のヒロインに抜擢され、撮影したイタリアのローマが思い出に残っているという。
「もう一度、ローマに行きたいな。ずいぶんと変わってしまったかしらね」