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オバマ大統領は5月27日午後、現職アメリカ大統領として初めて被爆地・広島を訪問。広島市の平和記念公園で安倍晋三首相と原爆慰霊碑に献花し、黙とうを捧げました。オバマ大統領は就任直後に行った演説で、核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として「核なき世界」を先導する責任について述べたことなどが評価され、09年にノーベル平和賞を受賞しています。

今回の訪問について、アメリカ側は「原爆投下への反省や謝罪の念を表明するためではなく、過去から学ぶことで未来を共に築いていく決意を表明するためである」と強調しています。というのも広島や長崎への原爆投下対してはアメリカ国内で意見が分かれているのです。

たとえば「原爆投下は不必要なもの。行きすぎた行為は戦争犯罪であり、決して許されるべきものではない」と断罪する見方があるいっぽう、「もし原爆投下がなされなかったら太平洋戦争は日本の本土決戦につながりかねなかった。そうなった場合は数百万人の日本人が犠牲となり、多くのアメリカ人の犠牲も不可避であった」と原爆投下を正当化する見方もあります。

後者の見方がアメリカでは常識になっていて、学校教育でも「原爆投下を決断した当時のトルーマン大統領は、戦争終結を早めることで多くの命を救った」と評価してきました。しかし近年「核なき世界」の考えが浸透するなか、ここにきて原爆投下を問題視する声も増えてきています。年配のアメリカ人は原爆投下に対して肯定派が大半であるのに対し、若い世代では「原爆投下は非人道的な行為であり、問題がある」と考える人が増えてきています。

今回、日本政府はオバマ大統領に謝罪を明示的に要求しなかったようです。おそらく日本国民の多くも謝罪を期待するというよりは「アメリカの現職大統領が広島を直接訪れ、献花や黙とうすること自体に意味がある」と思っていたのではないでしょうか。ある意味、日本政府や日本国民による大人の態度が、訪問を実現させた主要な要因になったと思われます。

いっぽう訪問の背景には、中国やロシアの拡張主義を牽制したいというアメリカと日本の利害が一致したという点も認識しておく必要があります。たとえば軍事支出費における国別シェアランキング(14年)でみると1位がアメリカ、2位が中国、3位がロシアとなっています。このように日本と隣接する中国とロシアが軍事大国になっていて、そこに北朝鮮の核開発疑惑やミサイル発射などの脅威も浮上している。そのため日米の同盟関係を強化することが両国の国家安全保障や国益にも直結することになると考えたのです。

皮肉なのは、そうした中国やロシアそして北朝鮮の脅威から日本を守っているのがアメリカの「核の傘」ということです。抑止力としての核保有が世界平和を守っているという不都合な現実を、我々はどう考えていくのか。我々一人一人の深い思索と、オープンな対話が求められているように思います。

平和記念公園での演説でオバマ大統領は「私たち人類は、過去に過ちを犯しましたが、その過去から学ぶことができます。人類共通の、戦争が起こらない世界、残虐性をたやすく受け入れない世界を作っていくことができます」と述べました。核兵器を使用したことがある唯一の核保有国としてのアメリカと、二度にわたり核を投下された唯一の被爆国としての日本。その両国が力を合わせることで、核に頼らない世界平和実現に向けて国際社会に働きかけていってほしいものです。

 

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