連続テレビ小説『べっぴんさん』の第16週は、駅前の繁華街で娘のさくら(井頭愛海)らしき影を見かけたすみれ(芳根京子)が夫の紀夫(永山絢斗)と帰宅。するとやはりさくらは家にいなかった。探しに行こうと慌てて外に出たところにさくらが幼なじみの健太郎(古川雄輝)、龍一(森永悠希)と帰ってくる。三人がナイトクラブに行っていたと知り、紀夫はとすみれは厳しく叱る。

 

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「俺が誘ったんや。なんや面白くなさそうな顔してる2人見てたら、刺激があったほうがええんちゃうかって思ってな」と龍一。紀夫は冗談じゃないと怒りつつも「もうあかんで」と言って話を切り上げたが、すみれの不安は収まらなかった。「謝ればいいというわけやないでしょう。さくら、嘘までついてあんなところに行くなんて、何を考えているの!」。すみれが問い詰めても、さくらは無言のまま。

 

翌朝、店に出勤すると君枝(土村芳)も健太郎が夜遊びをするとは信じられないと頭を抱える。ごめんね、うちの龍、アホやから」と謝る良子(百田夏菜子)。取り返しのつかないことでもあったらどうするのかと責めるすみれは「龍ちゃんは男やけど、さくらは女の子なのよ。ちょっと、甘やかしすぎなんやない?」と言い放つ。その言葉に頭がきた良子は「行きたいと言って付いて行ったのはさくらちゃんやない」と言い返し、2人のあいだに険悪な空気が流れる。そこに新入社員の中西直政(森優作)、西城一朗(永瀬匡)が初めて出勤してくる。

 

西城は24歳。大学卒業後メーカーに就職したが、自分の能力を生かせそうになく、転職をしたと挨拶する。もう一人の中西は家業の酒屋を継ぐつもりだったが店を閉めることになり、仕事を探したという。社長の紀夫は、新人とはいえ即戦力として期待していると激励し「社会人は気持ちを切り替えることが大事です。どんなことがあっても仕事は仕事。お客様には関係のないことです」と挨拶する。紀夫の言葉に気を引き締めるすみれ。

 

すみれは中西と西城にキアリスの商品の感想を言うように命じる。西城はほつれもないし生地も上等だと言い「いろいろされている工夫をぜひ伺いたいと思います」とハキハキと答える。一方、中西はゆっくりとした口調で「ええ匂いがしそうです。ミルクの匂いというか、小さくてほんわかしてて、こうして見てるだけでも幸せになります」と答えるのだった。

 

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ある日、さくらの変化を心配するすみれは「今後は朝食だけでも家族そろって食べよう」と決める。少しでも家族の時間がとれると聞いて喜ぶさくら。一方、キアリスでは新入社員の中西の提案で、お祝いギフト用の詰め合わせ商品を作ることになる。「すぐにでも欲しい」という現場からの声を受け、全員で一気にとりかかることに。翌朝起きてきたさくらは、すみれが早朝から仕事に出たことを知り表情を曇らせる。

 

叔母のゆり(蓮佛美沙子)の家を訪ねるさくら。ゆりが居眠りをする息子の正太に毛布をかけてあげるのを見ながら「家族って感じやね」とつぶやく。ゆりが夕飯を食べて行くよう言うが、さくらはすぐに帰ると言い出す。異変を感じたゆりは「私はさくらのことも家族やと思ってるよ」と引き止め、何かあったらいつでも言ってほしいと気遣うのだった。

 

そのころのすみれたちは、大急百貨店社長の大島(伊武雅刀)から大急の顔となる展示の担当を依頼され、テーマをどうするか悩んでいた。一方、紀夫は仕事帰りに新入社員の西城を居酒屋に連れていき、良子の夫・勝二(田中要次)と君枝の夫・昭一(平岡祐太)に紹介する。酔っ払った西城はすみれたちに対して暴言を吐き、夫たちは困り果ててしまう。「何が楽しくてあんなおしゃべり女と机並べてチマチマチマチマせなあかんのや!」と西城。

 

そうして、さくらの誕生日がやってきた。朝、すみれが今夜は絶対早く帰るから一緒にお祝いしようと声をかけるが、何度も約束を破られ傷ついたさくらはすみれの提案を拒絶するのだった。「絶対とか言わんほうがええし、約束もしないほうがええよ、お母さんは。そんなふうに言われてしまうと、こっちは期待してしまうの。もうたくさんやわ!」とさくら。内に秘めていた気持ちを爆発させる。

 

放課後、ジャズ喫茶「ヨーソロー」を訪れたさくらは、ドラム演奏者の二郎(林遣都)とアルバイトの五月(久保田紗友)に誕生日を祝福してもらう。一方、家でさくらの帰りを待つすみれはさくらを以前ジャズ喫茶の前で見かけたことを思い出す。「ヨースロー」のママのすず(江波杏子)から、さくらはナイトクラブに行ったと聞き、困惑しつつも店に向かうすみれ。ダンスホールで踊る龍一を見つけ歩みを進めると、派手な服装したさくらが楽しそうに踊る姿が目に入るのだった。

 

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「何をしてるのよ!?」。さくらを問い詰めるすみれ。すると一人の男性がすみれたちのほうに歩み寄ってくる。「すみれさん……」。そう声をかけてきた男性は、戦後間もないころ梅田の闇市で義兄の潔(高良健吾)と一緒に働いていた岩佐栄輔(松下優也)だった。10年ぶりの栄輔との再会に驚き、言葉を失うすみれ。龍一に知り合いなのかと訊かれ、昔、龍一も健太郎も栄輔によく遊んでもらったと説明する。「さくらもずいぶんかわいがってもろて」とすみれ。

 

驚きと混乱の中で、さくらを強引に家に連れて帰ろうとするが、さくらはそんなすみれに反発する。「勝手すぎるわ!忙しい、忙しい言うて、自分のことしか考えてないくせに!」とさくら。言うことを聞かないさくらに苛立つすみれは、思わず手をあげてしまうのだった。翌朝、和解しようとすみれがさくらの部屋に入ると、ベッドはもぬけの殻だった。「朝早くに学校に行かれました」と喜代(宮田圭子)は言う。

 

キアリスでは、すみれを気遣い暗い表情の良子や君枝たち。中西が客だと言って連れてきたのは、栄輔だった。驚くすみれたち。「どないしとったんや?あんとき、みんな心配して大騒ぎやったんやで」と明美(谷村美月)。栄輔は神戸の三宮で洋服屋をやっていると話す。「昨日お会いしたので、ちゃんと挨拶しとこうと思いまして」と栄輔。紀夫とも軽く挨拶を交わすと、急に来てすまなかったと言って立ち去るのだった。

 

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栄輔が店を出た後、大急の展示について話し合いをするすみれたち。そこへ、大急百貨店の支店で販売員をしている悦子(滝裕可里)が訪ねてくる。じつは結婚することになったと嬉しそうに話す悦子は「今度、紹介するわ、びっくりするような人よ」と微笑む。

 

すると「なんか、なんかな……」と言い出したすみれは、悦子の結婚の話をヒントに、「女の一生をテーマに展示するのはどうか」と提案する。「コウノトリが命を運んでくる。生まれる。赤ちゃんから子供になる。少女になる。結婚する。母になる。子供が生まれる。子供を育てる。孫ができる。そういうのを表現できないかなと思って」とすみれ。

 

良子、君枝、明美はすみれのアイデアに賛同。ようやく展示の仕事に取りかかれると張り切っていると、喜代から電話が入る。さくらのベッドの枕もとに置き手紙を見つけたと言うのだ。「この家を出ます。探さないでください。さくら」。

 

家出をしてしまったさくらを心配するすみれは、ジャズ喫茶「ヨーソロー」にさくらを探しに行く。「お嬢さん育ちが、よう勇気出して飛び出したもんや。よっぽどやな」とすず。買い物から戻った五月(久保田紗友)に、さくらを知らないかと訊ねるが「知らない」と言われてしまう。

 

すみれは家を出てヨースローで働いている五月にさくらを重ね、両親が心配しているから早く家に帰ったほうがいいと話す。しかし「自分の価値観だけで物事を推しはかることなんかでけへんはずや」とすずに言われ、考え込んでしまうのだった。

 

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さくらが姉のゆりの家にいると知ってとりあえず胸をなで下ろすすみれ。ところが、さくらを迎えに行ったものの、すみれは話もできないままゆりに帰されてしまう。話し合えるような段階は、とっくに過ぎていた。会社に戻ると同僚の明美が、落ち込むすみれを飲みに誘う。明美に連れて行かれた店は思いがけない場所だった。

 

明美に連れられ「ヨーソロー」に入ったすみれ。店の常連客の明美がすみれと友達で同僚だと知り、驚くすず。「私の中で、全然つながらんわ」と笑う。そして、仕事中の五月を見つめるすみれに、五月の家の事情を説明し「痛みを知ってるから、優しくなれることもあるのよ。親の思いはいつか伝わるよ」とすず。また明美は、「大変そうやけど、親子っていいなと思うわ」とすみれを慰める。そんな2人の優しい気遣いを感じ、礼を言うすみれ。すずがいれた酒を飲みながら微笑むのだった。

 

第17週の『べっぴんさん』は、すみれが任されていた大急百貨店の展示のテーマを「女の一生」に決め、明美、良子、君枝と準備を進めていく。一方で、家出中の娘・さくらは姉のゆりの家からいまだ帰らない。すみれは夫の紀夫に「会いに行かないか」と誘われるが、「今はまだかける言葉が見つからない」と断るのだった。一方、潔は紀夫から昔一緒に働いていた岩佐栄輔が神戸に戻ってきたという情報を得る。若者に大流行している洋服店「エイス」を経営しているのが栄輔だと思い当たった潔は、早速大急百貨店に推薦の話を持ちかけていくが……。

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