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北斗晶さんが乳がんの発表をされた翌日、川島なお美さんががんで亡くなられました。2人とも知り合いでしたから、大変なショックが私を襲います。しかも、彼女らはほぼ同世代。他人事とは思えなくなり、しかも、シングルファザーである私ががんになったら息子はどうなるのだろう、といろいろ考えてしまい、不安になりました。息子に、「パパ、お願い。次に日本に帰るときは健康診断行ってね。少しお酒とお塩控えてね」と切望され……。実は、北斗さんががんを発表したその前日、北斗さんと和やかなLINEのやりとりをしたばかりでした。旦那さんと明るい笑顔の写真付きでした。いえ、正確にはご主人は暗い顔をなさっていて、その明暗が正直気になっておりました。何かものすごく外に対して心と気を配っている北斗さん、うつむき加減に車を運転するご主人、次の日にあんな発表が行われるなどとは夢にも思っていなかったので、ニュースでそれを知ったとき、普段めったに驚かない私が、えええ、と大きな声を出してしまいました。昨日のLINEはなんだったの?と。手術の直前にも手術後にも北斗さんから、一言ですが、メールが届きました。最近は、また一緒にテレビに出たい、というメッセージも。思えば、テレビ番組にゲストで招いていただいてからのご縁です。私のライブにご夫妻でいらしたこともあります。「次回はパリで」と約束しておりました。この夢が実現出来ますよう、私は日々祈っております。由緒ある教会まで行き、お祈りもしました。

彼女の不安がよく分かります。なにせ、北斗さんは日本の「母ちゃん」を代表する人気者。大きな息子さん2人、そして愛らしいご主人のことを思うと、不意にがんが発見されたこと、無念でしょうがないと思います。3人のことが気がかりなはず。自分と置き換えてよく考えます。自分にもしものことがあったら、息子は親戚もいないパリでどうなるのだろう? 中学までフランス語教育を受けてきた彼が日本の学校に編入するのは至難の業。父親がいなくなれば、彼の人生の軌道は大きくそれてしまうわけです。離婚後、息子は私の健康を誰よりも心配するようになりました。私はもう56歳ですから、長生きに執念はそれほどありません。でも、息子のことを思うとおいそれと死ぬわけにはいかない。これはもう自分の命じゃないのです。人のための命。ですから、北斗さんと川島さんのことがあってから、食べるもの、飲むものに今まで以上に気を使うようになりました。健康はお金や名声やいかなる成功よりも大事なのです。

さて、今日は、免疫力をぐんとアップさせてくれる根菜を使ったカレーをご紹介します。カレー粉にも優れた免疫力がありますので、根菜カレーは最高の長生きメニューと言えます。

材料:れんこん15cmくらい、オクラ1パック、長芋15cmくらい、玉ねぎ1個、鶏ひき肉300g、にんにく1かけ、しょうが大さじ1、塩・こしょう適量、野菜ブイヨン1個、カレールー、トマトペースト大さじ1、油、バルサミコ酢各適量、オリーブ油、バター各大さじ1。レシピ:野菜を好みの大きさに切ります。お鍋にオリーブ油大さじ1、みじん切りにしたにんにくとしょうがを入れ、弱火で香りを出したら火を強め塩・こしょうした鶏ひき肉を炒め、野菜も炒めます。材料がひたひたになるくらいの水を入れ、野菜ブイヨンを加え煮込みます。材料が煮えてきたらカレールーを加え、トマトペースト(なければケチャップ)、油、バルサミコ酢、塩・こしょうなどで好みの味にしながら弱火でトロトロ煮込むのです。バターを加えて完成。お好みで半熟卵などをのせても。こりこり、根菜の食感がたまらないカレーです。免疫力アップに辻家では欠かせません。家族のために長生きをしましょう。

ボナペティ。

エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!

辻仁成/つじ ひとなり

作家。東京都生まれ。’89年「ピアニシモ」ですばる文学賞、’97年「海峡の光」で芥川賞、’99年「白仏」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。映画監督、演出家としても活躍。現在はシングルファザー、パリで息子と2人暮らし。

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