人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!
7月某日…。
うさこはある情報を入手した。
「カレー事情聴取」なるイベントが行われるという…!
何十店ものカレー屋さんが自慢の逸品を引っさげやってくるイベントらしい。
何を隠そうわたしはカレー調査一課としてこの世に派遣されて久しい
カレー特別捜査員なのである。
スパイスの効いたインドカレーから甘みある日本のカレーまでオールジャンルこよなく愛し、
カレー屋めぐりは欠かせない。
そんなわたしにとって、このイベントは逃すことのできないイベントであった。
というわけで事情聴取してきました。
会場はこじんまりした油野美術館
外からも賑わっている様子が垣間見える。
受付で入場料を払い、1ドリンクと3枚のミニカレー交換券をもらった。
一体どんなカレーがわたしを待ち受けているのか…。
スパイスの香りで涎が止まらないぜ。
まずわたしが突撃したのはスマイルカレーの「オリジナルベジカレー」。
身体が笑顔になると評判のこのカレーは、なんと動物性食材を一切不使用。
野菜だけで70品目も入っているという驚異の実力を誇る。
70品目が喧嘩することなくなかよく同居し、
一丸となって野菜の甘みうまみ丸出しのカレーを作り上げる…。
なんて素晴らしいのだろう。世界がカレーになればいいのに。
さて次は猫山カレー屋の「西瓜カレー」だ。
お品書きから驚きを隠せないこのカレー、本当にスイカがごろごろ入っている。
「す、西瓜カレー…!」とわたしがびっくりしていると
お店のお兄さんが「インドのグジャラート州に元々西瓜のカレーっていうのがあるんですよ」と教えてくれた。
「インドの西瓜は甘くないので、ほとんど瓜って感じです。糖度も6%くらい。
でも、この西瓜は鳥取の西瓜を使っていて、糖度も14%くらいあります。
甘い西瓜を使ってのカレーは珍しいでしょう。
そのため、ローストクミンパウダーでほろ苦く、
ライタというインドのヨーグルトと刻んだミントでスッキリと仕上げています。
食べられるフラワーも添えました。甘い西瓜を、ちょっと苦めのカレーで中和させています」
熱い解説だ…!ほとばしるカレーへの情熱…!
ワクワクが止まらないぞ…!
ドキドキしながら食べてみる。
カレーを食べるときに、ラッシーを一緒に飲んでおいしさ倍増した経験は皆さんもおありかと思いますが
それを一口で味わえるような甘みと辛さ・苦さのスペシャル☆コラボレーション…!
ヨーグルトの酸味やミントのさっぱり感など様々な味がおいしく絡み合って一石五鳥くらいの気分が味わえます。
カレーって本当に…1+1=2じゃなくて思いもよらない答えを出してくれるから魅惑的なんだなぁ…。
煮ぼんじりと揚げぼんじりの夢の饗宴「ボンボンカレー」@MOMSON CURRY
その場で炙られるぼんじり。もうノンストップ涎でお送りします。
ぼんじりという言葉から和風かと思いきやスパイス効きまくった汗垂れ流し系カレーでした。
香ばしいぼんじりのプリプリとスパイスが奥深すぎるぜ!!
3カレーでも十分お腹いっぱいになるけど、まだまだ事情聴取したりなかったわたしは
ミニカレー交換券を追加で購入(¥400)。
そして豆カレー+鶏キーマ@じぶちゃんカレー
カレーが2種類味わえるうえ、付け合わせまで…!
もったりした口当たりだけどあっさりの豆カレー、スパイシーなキーマ、やさしいかぼちゃ、サルサ…
カレー1つだけでもたくさんの味わいが口の中を押し寄せるのに、こんなに味わえて…
カレーってなんて贅沢なんだろう…!
幸せを司る脳内物質「セロトニン」の95%が腸で作られるということが近年の研究で判明した。
セロトニンがたくさん分泌されていると、人は「幸せ」を感じる。
腸が元気だと「脳にセロトニンを出せ!」という指令がたくさん出るらしい。腸はあたためられると元気になる。
体を温める食べ物は腸があたためられる→腸が元気になる→脳にセロトニンを出させる→幸せ気分
つまり…
体を温める料理の最高峰であるカレーを食べると人は幸せになるのだ!!!
その証拠とも言える景色はここにあった。
出店しているカレー屋さんたちはみんな笑顔で溢れている。
「自分たちもカレーが大好きなのでいろんなカレーが食べられて楽しい!」と語る彼ら。
そのカレー愛があるからこそ、自分にとって理想のカレーを極めてお店を開くのだ。
どこのカレーを食べても味わいが全く違う。
それぞれの「とっておきのスパイスの分量」を探して、研究に研究を重ねて最強の調合を編み出しているのである…。
普段から隠し味にりんごやチョコ、バナナ、コーラ、味噌を入れるという話を聞いてカレーの包容力凄まじすぎるなとは思っていたが
さらにカレーの懐の広さを思い知ったのであった。
どんな具材でも仲良くさせてしまうカレーを食べて、みんなが笑顔になれる空間。
これで世界中のみんなが幸せになれればいいのにと思いました。
これにて調査報告を終了いたします。
うさこ特別捜査員は幸福な気分で帰路についたのだった…。
米原千賀子
ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。