人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!
涼しい日が続き秋に染まり始めた今日この頃。
秋といえば…食欲の秋!!読書の秋!!スポーツの秋!!
何をするのにもバッチリなこの季節…そうAUTUMN!!
そしてそんな人々の愉しみを鮮やかに彩るのが…紅葉です!!!
今回は大阪府交野市にある「星のブランコ」へ行ってきた。
わたしが行ったのは8月半ばだったが、
それでもやや葉は赤くなりつつあった。
…今だ。今がその時だ!!!
「飲みたい」「騒ぎたい」という人間の欲望に汚されつつある「花見」に対して、
「紅葉狩り」は紅葉を見るためだけに存在する非常にストイックな行為だとわたしは感じている。
ぜひ皆さまもその太陽を受けた赤き情熱、去りゆく葉の最後の美しさを
心から堪能してほしいのである。
「星のブランコ」は「ほしだ園地」という公園の中にある。
このあたりには七夕伝説が根付き、星にちなんだキラキラした地名が散見できる。
弘法大師が星の道場を開いたこともあり、何かと星と縁がある地だ。
ロマンチックな旅になる予感…!
その予感が幻だと思い知らされるのはまだ先のことになる。
事前調査としてホームページを見ると、
京阪電鉄交野線「私市(きさいち)」駅から徒歩40分かJR学研都市線「星田」駅から徒歩70分かが選べる。
既にロマンチックを忘れそうだ。
はじめからこのストイックさ…!
そうだ、これが紅葉です(多分違う)。
私市駅に降り立つと、駅前からとてものどかだ。
少し歩くと川があり、こどもたちが楽しそうに遊んでいる。
早速混じる。
一瞬目的を忘れそうになるくらい、水が冷たくて気持ちいい。
「のどかな休日だなぁ」と、この時は思っていた。
ここからが本当のストイックの始まりである。
しばらく歩くと「ハイキングコース」が現れた。
矢印の方向へ進んでいくと、徐々に道が険しくなっていく。
人とすれ違うこともない、大自然ワールドに突入してしまったのである。
「足もと注意」なんていう看板もよく見る。気分は「もののけ姫」だ…!
現れる昆虫や鳥のなんと大きいことだろう。
しっぽの青いキレイなトカゲがうろうろ走り回ったり、
都会っ子のわたしは見たこともないような大きな蝶があたりを飛び回ったり
めくるめくもののけワールド。
歩く。
歩く。
歩く。
まだ着かない。
星のブランコに辿り着く前に行き倒れるんじゃないかという一抹の不安がよぎる。
しかし、ここで倒れてもきっと誰も見つけてくれない。
歩き続けるしかないのだ…!
ようやく「ほしだ園地」という看板を見つけたものの、
これを見たときの不安がお分かりいただけるだろうか。
実際その通りで、まだまだこの旅路は続くのである。
だがしばらくして、巨大ロッククライミングスペースが現れた。
視界に現代文明が飛び込んだだけでうれしくて泣きそうになった。
さらに小屋も登場。
わたしは、木の椅子に座ってアイスを食べながらつかの間の休息を楽しんだ。
こんなにおいしいアイスの味をわたしは知らない…。
ここまで来ると少しだけ人間も増え、家族連れなんかが見受けられる。
こどもたちがぴょんぴょん階段を登っていくなかぜぇぜぇ追いかけるお父さんを見て、
ひどく親近感を覚えた。
戦友を見つけた気持ちで「一緒に頑張ろうね…!」と心のなかで呟いて、
わたしもぜぇぜぇしながら登る。
そして楽しかった川遊びから歩いて1時間。
ようやく辿り着いたのである、この「星のブランコ」に…!
日本最大級の吊り橋「星のブランコ」。
全長は280メートルにも及ぶ。
周囲は山々に囲まれ、空中さんぽしているような気持ちに浸れる。
写真を見て「この日本トップクラスの吊り橋…きっと恐怖の淵へ追いやられるはずだ」とワクワクしてたものの、
土台がしっかり作られているためあまり揺れず正直そこまで怖くない。
しっかりしたホールド感に守られているのだ…。
怖がる人を見て楽しみたいサディスティックな嗜みを所望するなら、
高所恐怖症のひとを連行するのがオススメだ。
高所と背中を押して「うわぁぁ」と怯えるひとはやはり一セットみたいなところがある。
見晴らしがよく、爽やかな風が吹き抜けて非常に気分がいい。
ここに来るために、わたしは1時間のけもの道を歩んできたのだ…。
さらに歩むと丘があり、
星のブランコや京都までを一望できる。
これまでの努力を実感できる場所でもある。
そこで見える景色ほど素晴らしいご褒美はない。
今ではさらに木々が赤く色づき、素晴らしい秋の世界を作り出しているはずだ。
汗と涙と見渡す限りの紅葉を味わわずして
この秋は終えられないだろう。
さて、帰路だ。
わたしは戦慄する。
帰路ということはまた同じだけサバイバルしなければならないのか…?
せめて変化をつけようと思い、行先を私市駅ではなく星田駅に変えた。
み…道…?
一層の木々や草に襲われながらハイパーハイキングコースを下ったが、
思いのほか早くもののけワールドは抜けることができた。
「もうヤダ(泣)」と思ったからこそ、心に響く景色が見られる…。
「空腹」こそが最高のスパイスであるように、
「努力」が景色をより美しくする魔法なのである。
このほしだ園地が大阪市内から電車で20分程度あれば行けるように、
実は日本の至るところに自分たちの知らない大自然が広がっているので
マイナスイオンを浴びに行ってみてはどうだろうか?
紅葉本番になってしまうと混みまくると思われるので、
今のうちに人のいない自然界を体験するのがオススメだぞ!!
「ほしだ園地」詳しくはこちら!
http://osaka-midori.jp/mori/hoshida/index.html
米原千賀子
ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。