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人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!

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最近Twitterを見てるとよくラテアートを見かける。
それも王道のハートやオリーブの葉ではなく、繊細なキャラクターのイラストや有名人の似顔絵、カップ外まで進出した3Dのうさぎさんといった「進化したラテアート」だ。

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(Photo by じょーじさん https://twitter.com/george_10g より)

な、なんだこのかわいさは…!
なんて視覚に訴えてくるカフェラテなんだ。
もはやわたしが知っているカフェラテじゃない。飲みもののレベルも超越するかわいさ。こいつは進化している…!
現代カフェラテの実体を確かめるためにはまずもっとラテアートについて知らねばならない…そう思い調べてみたところラテアートを自分で体験できる教室があるという。
わたしもかわいいラテアートを作ってキャッキャしたい!そうだかわいいは作れる!!
勇み立ったわたしはラテアート教室へ突撃した。

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新大阪にある教室「OneRoom」。
無機質なマンションに突如現るかわいい扉。

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この扉を開けると、全女子がきゅんとするような空間が広がっているのです!!
現れたのは一人の男性…ラテアートの先生でオーナーの木村さんだ。

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「まずは作ってみましょうか」とさっそくラテアートに取り掛かる。
豆を挽いてエスプレッソを抽出し、ミルクを温めて泡を作り、ミルクピッチャーを動かしイラストを描き出す。
ピッチャーの動きだけで、表面を直接触ることなく完成していくイラスト。

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あっという間に描き上げる隙のない動き。

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魔法の類だろうか。思わず見惚れてしまう。

「描いて欲しいものがあるんですけど…」
名刺を差し出し「このうさぎに見えないうさぎです」というど厚かましい注文にも、快く承諾してくれる木村さん。
キメの細かい泡をマドラーや細い楊枝を使い単純な線でできてるうさこが、繊細な手つきでカフェラテの上に描き上げられていく。

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う、うさこや…。うさこinカフェラテや!!!

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人の手によって、さらにカフェラテという特殊な状況に生み出されたうさこに出会えた喜びがわたしの胸に解き放たれる。
「じゃあ、やってみましょうか?」
お誘いいただき、早速うさこもラテアートデビューすることに。
エスプレッソを抽出して、ミルクを泡立てる…という工程は難しいので、そこはやってもらって最後の部分だけを担当させてもらう。
カップに入った香り高いエスプレッソと、ふわふわ泡のミルクが渡された。
絶対おいしいふたつを、わたしが台無しにするわけにはいかない…!
恐る恐るミルクを注ぐ。はじめは高くから。最後は距離を縮めてゆっくりと…。
真ん中に出来た白い泡部分をマドラーで延ばしていくとなんとなくいつも見る例のうさこ型が完成。

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さらに楊枝で、丁寧に目と口を描き加えていく…。

完成!
……。

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…な、なんて幸薄い表情…!
ビビリすぎたためかこの細すぎる線。憂いを帯びた目。
これが限界か…!打ちひしがれるわたしに、木村さんが言った。
「カフェラテなので、よければ飲んでみてください」
ひとしきり写真を撮って愛で終わったあと、飲んでみるために砂糖を投入。

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ああぁぁ…なんて儚いんだ…。さようならうさこ、あとはスタッフがおいしくいただきます。
…。
本当においしい。
飲み物を超越するまろやかな口当たり。苦さを感じないやわらかな味。砂糖だけじゃない、豆そのものの甘み。これはわたしの知ってる「カフェラテ」を遥かに凌駕する…!
「かわいいだけじゃなく、おいしくないとラテアートじゃない」
木村さんは語る。

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「クレマと呼ばれる豆から発生するガスと油はドリップするとフワッと膨らむんですね。それがミルクと混ざり合ってできるのがカフェラテです。このクレマは、豆が新鮮じゃないと出ない。コーヒー豆って実はすごく鮮度が大事。お魚と同じくらい鮮度が大事な生鮮食品なんです!」
コーヒー初心者のわたしに衝撃が走る。コーヒーが…魚と同じ…!?
「日本にはこれだけコーヒーを飲む習慣があるけど、それはあまり知られてなくて。日本人の7、8割は劣化したコーヒーを飲んでると言われています。日本はコーヒー発展途上国なんです。
な、なんだってー!こんなに街を歩けばコーヒーに当たる日本がコーヒー発展途上国だったなんて!!
「嗜好品に決まりはありませんから、缶コーヒーもコンビニのコーヒーもいろいろあっていいと思います。でも僕はコーヒーが飲むのも作るのも好きで、カフェを開きたいと思ったので、おいしいコーヒーを伝えていきたい」
わたしは基本的にコーヒーが苦手だが、そんな苦みがキライなお子様舌のわたしでさえおいしくいただける。これが本来のコーヒーの持つ力なのか…!
「豆の産地、農園によって、味は全然違う。エスプレッソを落とす、豆を焼く、挽く、詰める、ミルクを泡立てる、注ぐ。動作が1個欠けてもカフェラテはできない。ラテアートも自分にとっては演出なんですよね。香りを出したり、焙煎するとき煙を出したりするように、コーヒーをおいしくするための演出。自分の作ったコーヒーをおいしいって言ってもらうのが僕の幸せです」
ラテアートばかり先行してしまったが、おいしいコーヒーがあるからこそのラテアートだったのだ…。

最後に、かつてイタリアンレストランでバイトしてた頃ミルクを泡立てた経験もあったので調子に乗って「ミルクの泡立てからやらせてください!」と懇願。
快くやらせてもらったものの、完成したのがこちらです。

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油が浮いた工場の排水図か!!
バイト時代の栄光が崩れ去りました。
「全てができてはじめてカフェラテになるので、全行程ができるようになるまで短くても2ヶ月はかかりますね」
ラテアートは、職人だけが使えるハッピーな魔法なんだ…。その険しい道のりを知る。
みなさんもぜひ、いつものコーヒーではなく、日本人の2、3割しか知らない真のコーヒーを飲んでみては!?

 

じょーじさんが働くラテアートが楽しめるカフェ「REISSUE」
東京都渋谷区神宮前3-25-7 丹治ビル2F(原宿駅から徒歩5分)
http://reissue.jp/access

ラテアート体験ができる教室「OneRoom」
大阪市淀川区西中島6-2-3 第7新大阪ビル12階18号室(新大阪から徒歩10分)
3月には移転してカフェ&教室として生まれ変わるそう。詳しくはHPで。
http://www.oneroom1218.com/

米原千賀子

ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。

公式サイト http://yonusa.wix.com/4bunno1
ツイッター http://twitter.com/yonusa1

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