人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!
何を隠そうわたしは重度の中2病だった。
中2病とは「自分は他の人間とは違う特別な才能を持つ選ばれた民である…!」と
特に何をしたわけでもないのに思い込んでしまうことを指す。
中学2年生ごろに抱きがちな妄想がゆえついた名前だ。
わたしはちょっと先駆けて小学校高学年が中2病最盛期で、
錬金術に関する本を読み(読んだものの難しくて挫折し)、
各国の神話にどハマりしては「本当のわたしはユグドラシル(北欧神話に登場する世界樹)の麓で生まれた…」的なことを本気で考えていた。
今思い返しても超痛い。
だが本人は至って真面目に、信じていたのである。
わたしも大人になり、「あ、普通の人だわ!」ということを認められはしたが
あの頃好きだったものはいまだに好きだ。
そんな折、大阪のアメ村に「魔女の店がある」という情報が入った。
魔女の店だと…?
一体何が置かれていてどんな店なのか想像もつかないが、このトキメキは一体なんだろう?
治癒したはずの中2病を疼かせながらわたしは魔女の店に潜入した!!
雑多なビルの片隅に、魔女とシャーマンのセレクトショップ『呪術と魔法の銀孔雀』はある。
入口から既に、見るからに深い意味を持ちそうなアイテムがお出迎え。
プロピデンスの目(神による全能の目を意味する)と思しきものや、魔女の箒のようなもの。
ワクワクする気持ちと、「わたしのような初心者が入っていいのかしら」という不安な気持ちが混じった。
覚悟を決めて突入する…!
出迎えてくれたのはずらりと並ぶ魔女グッズ。
魔術書、
おまじないキット、
祭壇に
惚れ薬…!?
こいつは間違いなく「魔女の店」だ!!!
お店の奥には、オーナーの柏木さんと店長のネクロさん。
とてもフレンドリーで、初心者でも歓迎してくれる。
しかしお二人、なんと現役の魔女らしい。
魔女が実在する…?
そもそも何をもって「魔女」というのか?
訊いてみると、柏木さんいわく「一番の魅力は儀式を作れること」だそう。
色々な考え方があり、一概に「これが魔女!!」と言うことはできないが
季節の変わり目に行われる「儀式」を大事にするのが魔女にとって基本的な営み。
「儀式」というと非常に重々しいものに思えるが、
例えば「正月に初もうでに行く」とか、「成人式には袴を着る」という我々にとって当たり前のイベントも「儀式」。
「いただきます」と「ごちそうさま」を言うことも、「儀式」のひとつとして捉えることができるそうだ。
ターニングポイントで、区切りをつける…。そんな儀式をデザインできることが、魔女の条件。
この店にある動物の骨や皮は、儀式に使うものだ。
魔女は現在増えつつあるようで、アメリカには100万人いるという説もある。
日本でも去年からブームの波が到来しているらしい。
魔女が増えている…!!
小学6年生のわたしがもしこのことを知ったら、すぐさま修行に取り掛かったに違いない。
魔女はハードルが高いものではなく、なろうと思えば誰でもなれるものだと柏木さんは語る。
「誰でもなれるし“こうでなきゃいけない!”っていう決まりもなく、自分でルールを作っていくもの。だからこそ、それなりの力を持たせるためには努力がいる。魔女の基本は、“物事をずらしてみる”っていうことです。“こうあるべき”という洗脳を解いて、物事の見方を多様化して、自分のことも客観的に見る」
例えば、“財布を忘れた”ということがあったら“ついてない1日だ”と思いがちだが、
“無駄遣いせずに済んだ!”とも言えるかもしれない。
確かに…世の中には固定概念で縛られてることばかりだ。その事実に気付けるだけで、ちょっと日常が変わる。
「“こんな世界がある”と知ってもらいたくて、魔女の店をやってます。悩んでる人たちに、“こういう生き方もある”って知ってもらえたらいい」
従来魔女に抱いていた、黒い服を着て陰で生きているようなイメージとは全く違う現代魔女。
まだまだ奥が深くて少し覗いたに過ぎないが、もっと知りたくなる未知の世界がそこにはあった!
わたしは“おまじないキット”のうちのひとつ、“マネースペルキット”を購入。
「お金よ来い!お金と仲良くなりたい!お金を貯める、お金が集まるキット」と聞いて
お金が大好きなわたしは欲に目をくらませながら即座にレジへ。
このキットはまず自分が生まれた生年月日の硬貨を別の種類で3枚探すことから始まる。
悲しいことにわたしの財布には入っておらず、店内を大捜索してもらったところ奇跡的に3枚集まった。
「魔術の最重要な部分は、人生も一緒なんですけど…。“自分が努力してやったことが報われる”という経験なんです。低いハードルでもいいから、飛び越えることで成功体験を作ると、それが自信になる。今、コインが全部揃って“これはもう効き始めてる”と思ったでしょ。その自己暗示が大切なんです」
帰ってから、わたしはおまじないを決行。
封入されているのはマネーマジカルオイル、和紙、キャンドル、豆。
オイルを塗ったろうそくに火を灯し、コインにもオイルを塗り込め、目標額を書いた紙を供え呪文を唱える…!
七日間、毎晩儀式は続いた。
おまじないをこなした自分が、昨日の自分と同じわけない。
「こうやって経験値をあげていくことが成功を近付ける自分を作るんだろう」ということが、身を持って感じられる時間だった。
生きていれば必ず、どうにもならないことがある。
そんなときに「心の経験値をあげる」お手伝いをしてくれるものが見つかるところだ。
奥深すぎる魔女ワールド…うっかり気軽に足を踏み入れてみては?
魔女とシャーマンのセレクトショップ『呪術と魔法の銀孔雀』
〒542-0086 大阪市中央区西心斎橋2-18-6 アベニュー心斎橋508号室
営業時間:15:00頃~20:00頃(不定休)
詳しくはこちら→http://guinqujack.jp/
米原千賀子
ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。
公式サイト http://yonusa.wix.com/4bunno1
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