「消しゴム」という、誰もが知っているお馴染みの文房具を削って
カワイイはんこを作り上げる「消しゴムはんこ」。
誰でも簡単に始められる消しゴムはんこの世界とは…?
人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!
偶然見かけた小さなマーケット。
お邪魔してみると、そこにはかわいい手のひらサイズのはんこがずらり。
「消しゴムはんこバル♪」なるイベントが行われていたのだ。
消しゴムはんこは誰しもに身近な「消しゴム」を削ってはんこにするアート。
道具も少なく出来るお手軽さで、2000年初頭から根強い人気を誇る。
このマーケットではいろんな消しゴムはんこアーティストが集まって、自分のはんこやはんこを使って作った作品を販売していた。
これは主催coyuzuさんの作品。
JESCA日本イレーサースタンプ復興会のクリエイター認定を受けている本物の消しゴムはんこマスターだ。
「彫っておしまいじゃなくて、新しい消しゴムはんこの可能性を追求してこういったメッセージカードも作っています」
カラフルで、立体感があって、どこかあたたかくほんわかした世界。
こんなメッセージカードを贈って季節のイベントを喜び合えたら、なんてしあわせなんだろう…。
わたしも…作ってみたい…!
心にめきめきと創作意欲が芽生える。
coyuzuさんに消しゴムはんこの極意を教わり、さっそく文房具屋へ。
「消しゴムとデザインナイフ、カッターマット、トレシングペーパー…他にもあったら便利なものもありますが、マストなのはこの辺です」
言葉を反芻しながら徘徊すると、消しゴムはんこコーナーを発見。
必要な道具が全部揃った初心者向けスターターキットまで見つかる。
初心者にやさしい世界!
ド初心者のわたしは迷わずそれを手に取り、レジへと向かった。
作成の手順は簡単。
①彫りたい図案をトレシングペーパーに描いて
②それを消しゴムにこすり付けて写し
③ひたすら彫る
それだけだ。
わたしは逸る気持ちを抑えきれず、ササッとうさこを描いて消しゴムへと転写させた。
デザインナイフで線をなぞっていく。
そこからさらに白く抜きたい部分の表面を削り落としていった。
30分くらい彫り続けて、
掌サイズの消しゴムはんこが完成した。
……。
なんだろう…この見てたら悲しくなる感じ…。
必要なモノが全部入ってるスターターキットにも技術力は入ってなかった。
わたしは線に迷いがあったことが敗因のひとつだと確信。
自分が自分の図案に対して「え?本当にここ削っちゃっていいんすか?」と疑っていたのである。
通りでプロはんこメーカーたちが「図案には命懸けます」「図案がダメだったらもうダメ」と言っていたわけだ。
「料理ができない」という初心者が大抵レシピも見ずにオリジナル料理を完成させてしまうように、
わたしもレシピを見ない見切り発車状態だったんだな…。
ここで練習のため
カーブの多い文様はんこを作ってみることに。
迷いのない図案なら、
細い線でもこれくらいキレイに彫ることができた。
ええやん…!!
「消しゴムはんこはしっかりした図案つくりから」
これから始める人みんなに熱く伝えていきたい鉄則だ。
悲しくないうさこスタンプを作りたいわたしは、
線画をしっかりさせるためまずはパソコンでイラストを制作。
それをプリントアウトしたのちトレシングペーパーに写し、
消しゴムに落とし込んだ。
賢い人は既に察したかもしれないが、
浮かれたわたしはこの時点で自分の犯した過ちなど、全く気付いていなかった。
一生懸命彫り進め、完成、
どんな出来上がりになったか試しにはんこを押してみる瞬間が一番ワクワクする。
たっぷりインクをつけて、しっかり紙に押さえた結果現れたものは…!
逆さまやないかーい!!!!
トレシングペーパーの向きをややこしく考えすぎた挙句、
信じられないミスをかましてしまった。
取り戻せないこともこの世にはあるよね…。
さっきのとは違った悲しみに襲われたが、
気を取り直していざ主役に取り掛かった。
消しゴム(実際に文字も消せる)を削って、細かい線を作り上げる。
実に細かい作業。はじめ雑の極みのわたしは「向いてない」と思っていたが、
本腰入れてやってみると結構ハマる。
ちょっとした休憩時間に、料理を煮込んでいるあいだに隙間を見つけて作業をするもよし。
ガッツリ作業に勤しむもよし。
大がかりなものが必要じゃないから、自由にやったり辞めたりできるところが
忙しい主婦にも人気がある理由のひとつなんだろう。
ちょこちょこ彫り続けて、
やっとうさこスタンプが誕生した。
誰がなんて言おうとすごくいい感じだ。
他のどんな画材にも出せない、
はんこならではの味。あたたかみ。
一から十まで自分が作ったからこその愛着。
こんなに身近な「消しゴム」から始まるこんな世界があるなんて…。
想像力によって、いつもそばにあるものも
思いもよらないものに姿を変える。
消しゴムはんこワールドにはそんな無限の可能性が潜んでいた。
消しゴムはんこを始めるにあたってお話を伺った先生
Coyuzuさん(JESCA日本イレーサースタンプ復興会 認定クリエイター)