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『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『海外ドラマ』ということで、『BAILA』『日経エンタテインメント!』ほか各種媒体に映画・海外ドラマのレビューやコラムを連載中の今祥枝さんが最推しドラマを紹介!
【最推し海外ドラマ】『UnREAL』
『バチェラー・ジャパン』という恋愛リアリティー番組を、ご存じだろうか? 容姿にも経済的にも優れた1人の独身男性をめぐり、一般公募の25名の女性たちがバトルを繰り広げる。野心満々の女性たちによる、恋愛の駆け引きが見ものだけれど、アメリカのオリジナル版『The Bachelor』のエグさ、過剰さにはかないません。
あからさまにセクシュアルな装いで、ぐいぐいと自分を売り込む女性たちの姿に、苦笑いしつつも興味津々。誰が勝者になるか見届けてしまう。アメリカでは知らない人はいないというこの人気番組を模した、架空のリアリティー番組「エバーラスティング」の舞台裏を、赤裸々に描いたドラマが『UnREAL』です。
主人公は、仕事はデキるが、公私ともに(特に恋愛)疲れ果て、心が壊れかけているアシスタント・プロデューサーのレイチェル。上司の敏腕女性プロデューサー、クインとともに番組が毎回盛り上がるよう、あの手この手で出演者たちの「非常識な言動」を引き出していく。その手段は、ありえないほど卑怯で、いくらなんでも嘘だろうと思うことの連続。でも、制作にはオリジナル版に携わっていた女性がメインスタッフとして参加しているんですね。だから、本作で描かれる仰天のエピソードの数々は、あながち絵空事でもないのです。
職場で男が絡むと、さらに状況はややこしくなる。レイチェルの元彼も、クインの不倫相手も、同僚です。一方で、番組の出演者たちもシングルマザーに薬物依存、遊び人からセクシュアリティーを隠した女性まで、各々が問題を抱えている。好感度大の御曹司アダムにもまた、しょうもない裏の顔が。出演者とスタッフによる複雑な人間模様と平行して、劇中劇の形を取る「エバーラスティング」の勝者のゆくえも、最後まで予想を裏切り続ける。まったく心臓に悪いドラマです。
実際に、リアリティー番組を見ていて、仕込みが一切ないと信じている人はいないはず。台本はなくとも、作り手に誘導されなければ、そう上手いこと番組は盛り上がりません。レイチェルは、本心では視聴率が高いだけで中身のないリアリティー番組ではなく、もっと別の、有意義な番組作りに携わりたいと願っている。そのためには、ここで結果を出して認められなければならない。日々全力を尽くしながらも、ばかばかしい番組に骨身を削る我が身を嘲り、やけっぱちになるレイチェルの姿に、働く女性としての苦労を重ねる人もいるでしょう。
誰よりもタフに働くレイチェルとクインは、「金、ペニス、権力」を合言葉に、この世界での成功を誓い合います。なんてダイレクト! こんなふうに本音全開、欲望のままに生きることができたら、今より幸せになれるのか? なんて、道徳的な問いかけは後回しにして、まずはドロドロかつ何でもありの愛憎ドラマに、どっぷりと浸ってみれば、日頃の憂さも、どこかへ吹き飛んでしまうはず。