利勝さんは高校時代、バスケットボール部に所属。2年生のときにはキャプテンを務めた。
バスケ部に入った理由は「施設に帰る時間をちょっとでも遅らせたかったから」。
後に報道されたが、当時施設で働く女性職員からセクハラを受けていたことが大きな理由だったという。
「高校に入ってからは友達ができました。カレー事件のことは隠していましたので、一般の子供と同じように普通にしゃべってきてくれました。ただ、施設に入っていることも隠していたので、『おまえの家に行ってゲームでもしようぜ』という会話になったときがいちばん困りましたね。『僕は、おばあちゃんの家に住んでいるから』と言ったりしてずっとごまかしてきました。友達の家に行って、家族を感じると『いいなぁ』と思うこともありましたね。結局、いろんなことを隠して、自分の本当の話ができないことが辛くてストレスになったことも事実です」(利勝さん)
だが、久しぶりに友達ができたのも束の間、利勝さんは生涯忘れることのできない屈辱を味わう。それは高校2年生の時のバスケットボールの大会の試合で起きた。
利勝さんがシュートを決めた瞬間、相手チームの応援席か『死刑囚の子供や!』『死刑囚の子供がシュートを決めた!』というヤジが飛んだのだ。そのときはショックのあまり学校を辞めようかと思ったそうだ。
結局、その後も高校に通ったのだが、卒業寸前に『もうみんな知っているぜ。別に隠さんでも』と友達から告げられる。高校の3年間、必死で親のことは隠し通したつもりだったが、じつはバレていたのである。現在、高校時代にできた友達とは誰1人付き合ってはいない。
「高校生ぐらいになると、だんだん大人の感覚になってきて、この事件のこととかも当然把握している。だからこそ、カレー事件とは距離を起きたかったですね。僕は一般の子供なんやという意識を常に持っていきたかったですね」(利勝さん)
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