「仮死状態で生まれた翔子は敗血症を起こしており、あと1日でも手術が遅れていたら生きることができなかったそうです。
しかも、出産後に担当医は『ダウン症で、敗血症だから交換輸血をしなければ助かりません。なにもしなければ命の灯は消えてしまいますが、どうしますか?』と冷静に問われたそうです。
要するに、ダウン症であるから助けるかどうかは、親の判断に任せるということ。そのとき、私は手術後の麻酔で眠っていたので夫が、その選択を迫られたです。
そこで夫はクリスチャンですから、『絶対に助けたい』と、窓辺に行って神様に向けて迷わずこういったのです。『主よ、私はあなたの挑戦を受け入れましょう』って。
それで自分で翔子に輸血をして翔子を助けてくれたのです。後々まで『翔子よかったね。お父様がいなければあなたは助からなかったんだよ』そう言って、よく頬ずりをしていました」
夫の思いとは裏腹に、わが子がダウン症と知ってからの泰子さんは、ひたすら母娘2人で死ぬことばかり考えたという。
「夫は誕生を喜んでくれましたが、私は『知能がなくて、どうして育てられるのだろう』と絶望していました。
『周りに迷惑をかける前に、2人で死んでしまわなくては』『ゆりかごの中にいるうちに私が始末をしなければ』と、そればかり考えていたのです」
泰子さんは、自動車事故がいいか、ピストルはどうやって入手するのだろうか、とか、あらゆる手立てを真剣に考えていたという。
「あれこれ考えた挙句、ピストルなら確実ですが、入手するのはやはり不可能ということで、どこか遠いところに行きそのまま行方不明になってしまおう、という案が有力でした。
けれど、産後、日が経って、夫が『洗濯物がずいぶん溜まってしまっているんだよ』って。現実に立ち返ってみると洗濯物を一度なんとか片づけておかなくては、と思いつい家に帰ってしまったのです」
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