アルジェリア人質殺事害件で失われた日本人10人の命。1月25日早朝、生存者7人と犠牲者9人の遺体を乗せた政府専用機が羽田空港に到着した。その後、空港内の施設で遺族は遺体と対面。家族の無事を祈っていた遺族たちの「家族再会」は慟哭の現場となった。
犠牲となった派遣会社社員・内藤文司郎さん(44)の父、傳八さん(81)は愛知県豊橋市の実家にひとり残っていた。羽田空港での息子との対面を拒否した傳八さんは、その理由をこう語った。
「傷だらけなのか、どうなっているのかわからない文司郎の、変わり果てた姿を見たくないから……、女房にもそう言って家に残りました。(息子の死を)受け入れるなんて、とてもできません。まさかアフリカのアルジェリアというよく知らない国でこんなかたちで突然死ぬなんて……」
傳八さんは文司郎さんが海外に出たのは「3カ月間だけだったのに……」と続ける。2年前にも海外に行ったが、アルカイダが危険だからと、日本人はみんな急きょ帰国したことがあったという。
「それでもう海外なんて言わないだろうと思っていたら、今回また突然アフリカに行くって言いだして。『テロの心配は大丈夫だから。3カ月だけだし、給料がいつもの2倍なんだ』と。私も3カ月だけならいいかと思ったんです。運が悪いとしか言えない……。」
文司郎さんは建設会社に勤務した後に、派遣会社に登録。昨年10月に宿舎建設の現場監督として現地入りし、1月26日には帰国すると傳八さんに連絡していたという。傳八さんは、文司郎さんが独身だったことが結果的にアルジェリア行きにつながったのではないか、とため息をついた。
「今回、アルジェリアに行ったメンバーには妻帯者がほとんどいないと聞きました。文司郎もお嫁さんがいたらこんな目に遭わなくてすんだかもしれないと思うと無念ですよね。会うたびに私は言ってたんです『早くいい女性を見つけて結婚しなさい』と」
”もし結婚していたらアフリカには行かなかったかもしれない”、父は無念の言葉を何度も繰り返した。