日本人人質17人のうち10人が犠牲に。早急な突入が最悪の結果を生んだアルジェリアテロ事件。「日本が自らの手で人質救出に向かっていれば結果は違った」というのは、軍事フォトジャーナリストの菊池雅之氏だ。
「アルジェリア人民国軍のT72戦車が見えた瞬間に、人質を救出する気はないな、と思いました。自衛隊の特殊部隊が作戦を遂行していれば、犠牲者数を3分の1にできたと思います」
陸上自衛隊は’07年、国内外を問わず市街地でのテロ・ゲリラ戦や人質救出作戦などを専門におこなう防衛大臣直轄の組織「中央即応集団」を創設している。ここが特殊部隊を統括している。「特殊作戦群」はグリーンベレー、デルタフォースを手本として’04年3月に発足した日本初の本格的特殊部隊だ。
元陸自研究員で軍事評論家の高井三郎氏が解説する。
「特殊作戦群の基幹要員はアメリカの特殊戦教育機関に留学するなどしています。市街地、空港、港湾、森林、雪原などあらゆる環境条件を想定し、テロなどに対処する訓練をおこなっています」
創設前年には、少数の編成準備要因が過酷な環境条件を肌で感じるために、第1次イラク人道支援隊本部に派遣されたこともあるという。さて、我らが自衛隊はテロリストをどうやって制圧するのか。
「作戦は短時間で終わらせる必要があるので、まずは情報分析。施設の状況は事前に日揮から入手できるでしょうが、敵情把握には時間がかかるかもしれない。現地までの移動中に、これらの情報を分析します。そうすれば、テロ組織には戦車などはなく、近接戦闘ですから、自衛隊でも救出作戦は可能だったと思います」(高井氏)
「使用武器は銃身が短い小銃M4に夜間も使えるダットサイト(光学照準器)を装着したもの。暗視ゴーグルつきのヘルメットをかぶり、全身を黒い服で固めた特殊部隊は、テロ組織を一掃したでしょう。自衛隊は『100人の人質がいたら、100人を助ける』という動きを意識している。今回のように犯人がトラックに人質を乗せて移動しようとしたら、当然トラックのタイヤを狙い移動を止めます」(菊池氏)
しかし現実的には、こうした作戦実行には高いハードルがある。法的に、自衛隊による邦人保護活動が制約されているのだ。政治部記者が話す。
「現行法では、自衛隊が海外で邦人を輸送することに制限がある。隊員の安全が確保されているときに限られ、輸送手段は航空機か船舶に限られる。陸上での輸送ができない。さらに武器を使用する際は正当防衛に限られている。この点を改正しなければ、自衛隊の人質救出作戦は夢物語に終わります」
(週刊FLASH 2月12日号)