「歴代市場長5人が盛り土をしないとの変更を『知らなかった』とは“無責任体制”と言わざるを得ない。建築の安全、水質の安全、そして食の安全をないがしろにした市場は、そもそもありえない」
9月23日、東京都庁で行われた小池百合子都知事(64)の定例記者会見。報道陣120人以上、ギッシリつまった会場で、小池都知事は険しい表情をみせた。8月31日の「移転延期」の発表後も、「盛り土」問題ほか、次々と明らかになる偽装や汚染の事実……。
まず、日本共産党都議団が16日、採水した溜まり水の検査の結果「猛毒のヒ素が環境基準の4割に及ぶ数値で検出された」と報告した。一方、都は17日、溜まり水の調査の結果「青果棟、水産仲卸売場棟からヒ素、青果棟から六価クロムが環境基準値以下で検出された」と発表。不具合は“汚染水”だけにとどまらない。23日に加工パッケージ棟を視察した都議会民進党の西沢圭太都議(37)が4階の様子を明かす。
「コンクリートの床に柱の下から20メートルはあろうかと思われるひび割れが、何本にもわたってあった。だから都は見せたくなかったのかと思いました。地下には膝下までの30センチほどの溜まり水がありました」
都は“ひび割れ”で耐震性などの問題はないというが、大手建設会社関係者が話す。
「高強度のコンクリートを使用した際にまれに入るクラック(ひび割れ)で“よくある”という都の説明はおかしい。普通は髪の毛の太さくらいで、これはかなり幅が大きい」
そもそも、所有者だった東京ガスが’01年1月に、発がん性物質・ベンゼンが「環境基準の1千500倍」などの土壌調査結果を発表した土地を、汚染がない場合と同等の約1千860億円で購入したのは、なぜなのか? 当時、両者で何が話し合われ、どのように決定していったのかという“交渉記録”が存在すると語るのは、市場移転問題に詳しいジャーナリストの加藤順子さん(43)だ。
文書はほぼ全ページにわたり黒塗りされ、判読できるのはせいぜい主語のみ。’99年11月の東京ガスとの交渉にはさっそく副知事の肩書きが見て取れることに加え、’00年5月の《福永副知事と■■との会談内容》なる文書では都側の出席者名が読めるが、東京ガス側の出席者名は黒塗りの状態だ。
「ここで読み解けるのは、最初から副知事という首脳クラスが関わっているということです。ナンバー2が最初から登場していることから、都が早い段階から豊洲をほしがっていたことがみてとれます。さらに、協議の数におどろかされます。多くの部署からも参加して会議が行われるわけですから“豊洲購入”は都を挙げての目標だったのではないかと考えられます。黒塗り文書でも、都が強引に取得を求めた様子が感じ取れます。当時の担当者たちは、将来も環境汚染を監視し続けなければならない土地に、食品市場を移せるとなぜ思ったのか。経緯を知ろうと情報公開を求めると塗りつぶして逃げる――。こうした都の体質は、今も変わっていません」
移転反対派だけでなく推進派からも出てきた“真実解明”の機運。小池都知事のさらなる追求を期待したい。