バンクーバーでフィギュア男子日本初のメダルを獲得し、ソチ五輪でも連続表彰台に期待がかかる高橋大輔(27)。壮行会では、母・清登さん(64)からの手紙が読み上げられた。
《大輔へ 全日本、お疲れ様。大変でしたね。でも、よく頑張ってくれたと嬉しく思いました。お母さんもちょっと涙をもらいました。(中略)今までスケートをしてきたことをいろいろ思い出していました。お母さんにはわからない苦労もたくさんあったことでしょう。でも、ここまで来るまでには長光(歌子)先生をはじめ、チーム大輔はもちろん、数多くの人たちに支えられてきたことを決して忘れないでください》
“涙の手紙”には、母の願いが込められていたという。清登さんは「やはり感謝の気持ちを忘れてほしくない」と語る。ジュニア時代には理容師として働きながら、夜にはパートに出て息子の競技生活を支えてきたという清登さん。理髪店には『リンク代』と書かれたペットボトルが置かれ、訪れた客がお釣りを入れてくれるようになったという。
「理容店が終わると、夜はお弁当屋さんで働きました。夜9時から12時まで、時給は800円ほど。6年ほど続けました。微々たるものですが、それでも助かりました」
父親もスケート靴のエッジを研ぎ、演技を撮影したビデオを『よく飽きずに見れるね』と家族に言われるほどチェックし息子を支えてきた。そんなみんなの思いを背負って挑むソチ五輪。メダルが決定するのは2月14日だが、そこには運命的一致が隠されていた。
「実はあの子がスケートを始めたのが、ちょうど(20年前の)2月14日だったんです。幼稚園のころから、小学校4年生くらいまで日記をつけさせていたのですが、読み返してみると(小2の)2月14日に『スケートリンクにはじめていった』と書いていました。そのあとの日記に書かれていたのは、どんなジャンプをしたか、スピンをしたか、どんな練習だったかなど……。ずっとスケートのことばかり書かれていました」
スケートを始めてからちょうど20年。今大会での引退を表明している高橋へ、母はこんな願いを語った。
「五輪の空気を楽しんで思いきりやって、最後に『オカン頑張ったよ!』と言ってくれることだけを待っています」