「支えてくれた人たちに感謝を伝えるためにここに来たので……。よいところを見せられなくて残念です」
そう涙ながらに語った女子スキージャンプの高梨沙羅選手(17)。今季ワールドカップ13戦で10勝、金メダルの本命と期待されたが、まさかの4位に終わった。競技が行われた2月11日深夜、高梨の故郷である北海道上川町では、パブリックビューイングの会場に300人の住民が集まり声援を送っていた。場内には、《上川町から世界の頂点へ 高梨沙羅》や《目指せ金メダル》と書かれたのぼりや横断幕が掲げられた。
17歳の小さな背中は、ここまで日本中の期待を背負ってきた。100mを超える大ジャンプは世界でも絶賛され、苦手なインタビューに英語で応じることも。
「自分が注目されることが、女子ジャンプという競技の発展につながる」、高梨は以前からそんな使命感をもって飛び続けてきたのだ。そしてむかえた五輪本番。慣れない形状のジャンプ台、追い風という不利な条件、そして目には見えない重圧……。彼女が不安に追い込まれたとしても無理はないだろう。しかし、高梨がこれらを敗因にあげることは決してなかった。
4位という順位が伝えられた瞬間、パブリックビューイングの会場は静けさに包まれたが、ほどなくすると、
「世界4位だもの。すごいよ。よく頑張ったね。沙羅ちゃん、ありがとう!」
歓声と同時に、地元のヒロインへ向けた、300人の惜しみない感謝の拍手が響きわたった。
14日に帰国した際、成田空港で報道陣に、「これから精神面も磨いて、もっとレベルアップしたい」と語った高梨が次に臨むのは、3月1日のワールドカップ・ラスノフ大会(ルーマニア)。ここで優勝すれば、5戦を残し今季の個人総合優勝が決まる。夢への新たな挑戦は、もう始まっている。