5月12日、サッカーW杯ブラジル大会に挑む日本代表23人が発表された。メンバーの中で“サプライズ選出”と、話題になったのが川崎フロンターレ所属の大久保嘉人(31)だった。ザッケローニ監督は、この2年以上大久保を代表メンバーに選んでいなかったからだ。
「まさか嘉人が選ばれるなんて、はなから思っていませんでしたよ。だから発表前日に家族で墓参りに行ったときも、(亡き夫には)W杯のことは何も話しませんでした」
こう語るのは大久保の母・千里さん(59)。代表メンバー発表日は、大久保の父・克博さん(享年61)の“一周忌”だったのだ。代表発表の翌々日、母・千里さんがインタビューに応じてくれた。
大久保は、いつも試合のある日などには、克博さんの形見の腕時計を右腕につけている。
「夫も右腕につけていました。もともとは嘉人が夫に還暦のお祝いに贈った品です。病室でも最期まで、その時計をしていました」
’10年の南アフリカ大会のとき、克博さんは病院から外泊許可を得て、自宅に戻って観戦していたという。それだけに、大久保が大会後に、燃え尽きて“代表引退”を口にしたとき激怒した。
「あのときは、嘉人も膝を悪くしていましたし、いろいろ考えていたのでしょうけど、夫からしたら『バカタレ!日本代表までいって、とぼけるなよ!』という気持ちだったんだと思います」
弱音をはいた大久保に、もう一人、活を入れた人物がいた。妻・莉瑛さん(31)だ。克博さんと同じように「バカじゃないの!」と叱咤したという。“嫁”の莉瑛さんの話題になると、千里さんの顔がほころんだ。千里さんは莉瑛さんのことを“奥さん”と呼ぶ。
「代表発表の後、すぐに電話があったんです。よかったね、よかったねと、2人で喜びました。奥さんには『あなたが料理とか、いろいろ家のことをしてくれたから、(嘉人も)ケガなくここまでやってこられたのよ』と、伝えました。私が言うのもおかしいですが、彼女は頭の回転も早いし料理も上手。試合の前日には食べないほうがいい食材とかあるでしょう?そういったことも考えてくれるし、健康管理はいつもきちんとしてくれているので、感謝しています」
莉瑛さんは、8歳、4歳、2歳の男の子3人のママでもある。母と妻、3人のこどもたち、そして、“空の上でみとう”亡き父のために、大久保はブラジルでゴールを狙う――。