「引退して3カ月になりますけど、いまは、まるで緊張感がないというか……(笑)。7歳の長女と4歳の長男は、僕が辞めてから相撲に興味を示さなくなった。とくに長女は毎場所、テレビで午後1時から僕の取り組みが終わるまで相撲中継を見ていた。でも奥さんの話では、先場所(9月の秋場所)からまったく見なくなったそうです」
そう語るのは、元関脇旭天鵬の大島親方(41)。モンゴル出身力士の一期生として92年、17歳で来日。99年夏場所に入幕して、12年夏場所では、史上最年長の37歳8カ月で初優勝。その後、14年秋場所に「60年ぶりの40歳幕内力士」になり、今年の夏場所では幕内出場記録を更新(通算1470回出場)など、その不屈の活躍は「角界のレジェンド」とも称された。
今年7月の名古屋場所限りで引退した大島親方が、自らの土俵人生を振り返る。
「23年半も相撲を取り続けることができたのは、応援してくださった方たちのおかげだと感謝しています。でも、それ以上に僕を支えてくれたのは”家族”です。具体的に言うと、結婚する前は両親でした。父親は6年前に亡くなりましたけど、それまでずっと体調がよくなかった。それで『親父のためにもがんばろう』と思って一生懸命やってきた。そして、奥さんと出会って、結婚したら『彼女のためにもがんばろう』と。子供ができたら『子供がわかるようになるまで相撲を続けたい』というように。そのとき、そのとき僕を突き動かしてきたのは、間違いなく””家族”でした」
05年6月に日本国籍を取得した親方は、06年5月に恵子夫人(42)と結婚。1男2女に恵まれた。妻・恵子さんは留守がちの家を守るだけでなく、モンゴルの父母を献身的に支えたという。
「父親が日本で病気の治療をすることになって。僕が場所や巡業で東京にいない間、彼女は病院への送り迎えなど献身的に父親の世話をしてくれた。父親が亡くなったあとも、奥さんは『お母さん(62)に来てもらったら』と言って。母親は冬場になると日本へ来てうちで暮らすようになりました。冬のモンゴルはマイナス20~30度にもなるので。だから、奥さんには感謝、感謝で頭が上がらない(笑)」
引退後の8月、親方は夫人と3人の子供を連れてモンゴルに里帰りをした。その際、妻・恵子さんに感謝を込めて現地式の結婚式を挙げた。
「モンゴルで結婚式を挙げたのは、日本で披露宴はしたけど、式はしていなかったからです。結婚してもうすぐ10年になるし、奥さんへの感謝と『お母さんが元気なうちに』と考えて式を挙げました。父親も一緒ならもっとよかったけれど……」
大島親方の断髪式(引退相撲)は、来年5月29日に両国国技館で行われる。その後は「できれば部屋をもって後進を指導したい」という。今度はおかみさんとして、妻・恵子さんは親方を支えることになりそうだ。