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7月19日と20日、米・フィラデルフィアのシチズンズ・バンク・パーク球場の観客席にサングラス姿で大きく手を振り、応援する日本人女性がいた。歌手の石川さゆり(58)だ。メジャー通算3千本安打の偉業達成間近のイチロー(42)の応援に日本から駆けつけ、2日連続で生の声援を送ったのだ。

 

「彼女は毎年イチローの応援に渡米しています。今年は埼玉県大宮でのリサイタルが終わるのを待って、レコーディングもかねて渡米したようです」(芸能関係者)

 

石川は試合後にイチローと一緒に食事をした様子を、ホームページの日記にこう綴っている。

 

《お食事も一緒しましたが、やはり日本でシーズンオフにお会いするよりシュッと一段と引き締まって、大リーグで闘っているんだなーと感じます。いつもの大きな声と笑顔がステキでしたよ》

 

演歌歌手と大リーグ選手の意外な交友関係。アプローチしたのはイチローのほうだった。08年12月にNHKBSで放送された『私のうたの道~石川さゆり~』のなかでイチローはこう語っている。

 

「石川さんに興味を持ったのが、07年の紅白ですよね。ン!って思って。この力の抜け方と入れ方は何なんだと思ったんですよ。こりゃすごいぞと」

 

すぐに彼はチケットを買い、石川の呼吸法と体の使い方を直に見るために、コンサートに行った。

 

「『天城越え』の(歌詞にあわせてひらひらする)手の動きがたまんないですよ。で、08年のぼくのシーズンはいろんなものを越えていかなくてはいけない。で、自分のなかでそういうものも生まれていかなければいけない。そういう思いも込めて、これは『天城越え』だと石川さんにお願いしたんです」

 

順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、イチローが石川に教えてもらった力の入れ方と抜き方を、こう絶賛する。

 

「バッターボックスに入るまでの動き、屈伸や深呼吸を取り入れながら、メリハリのある動きをしています。演歌歌手の呼吸法もまさにメリハリのあるもの。こぶしを回すときに思いきり吐いて、そのあと感情を込めてふっと脱力する。緊張と脱力が自律神経を整えることにつながるんです。日常に取り入れるとしたら、爪先立ちをしてふっと力を抜いてストンとかかとを落とす。そんな動きが効果的です」

 

イチローは石川の呼吸法から取り入れた体の強弱リズムを実践したおかげで、08年には日米通算3千本安打、107年ぶりの記録更新となる8年連続200本安打の大記録を達成。実際にイチローが試合でメリハリのある動きを取り入れている姿を目撃したスポーツ紙記者は、こう語る。

 

「守備位置につく彼のすぐ後ろで試合を見たことがあるのですが、いつ球がどっちに飛んできてもすぐにダッシュができるように、爪先立ちなんです。そしてプレーの合間にはふっと力を抜く。そのメリハリが絶妙でした」

 

小林先生は、代打中心のいまこそ、体の強弱リズムが効果的だと語る。

 

「そのリズムは緊張をほぐしますから、ルーティンにすることで心の迷いが消えるんです。血流もアップし、末梢まで神経の伝達がよくなり筋肉の反応も良くなります。1人でいるときと6万人の観客がいるときで心の変化がなく、突然試合に出てきても平常心でプレーできる」

 

交流8年。石川の呼吸法がイチローを支え、今年は08年以上の“偉業”を手にする。

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