逝去した直木賞作家・藤本義一さん妻「出会えてよかった」
「主人とは結婚して54年、結婚前に4年ほどお付き合いしていましたから、出会いから58年になるんです。その人にもう二度と会えないと思うと本当に……つらいです」
ときおり言葉に詰まりながらこう語るのは、10月30日に肺炎で急逝した直木賞作家・藤本義一さん(享年79)の夫人で、タレント、エッセイストの統紀子さん(77)だ。その統紀子さんが、藤本さんの2年にわたる闘病生活を初めて本誌に語ってくれた。
「主人が脳梗塞で倒れたのは’10年の7月でした。でも、幸い症状は軽くて、10日ほどで回復してベッドの上で仕事をするようになりました。退院後も、見ていて心配になるくらい仕事に没頭して——。そんな主人に、いまの医療をもってしても生還が極めて難しいといわれる悪性の中皮腫が見つかったのは昨年の4月。お医者さまから『もって1年です』と余命宣告されました」
医師からは、藤本さんの年齢を考え、手術ではなく抗がん剤による治療を勧められたが、副作用を心配し抗がん剤は使わなかった。そのかわり、代替治療として高濃度のビタミンCを摂るなどして、がんの進行を抑えることにした。その結果、余命1年は1年半になった。
「最後は、私と2人の娘、それに親しいお友達に見守られて、天国へと旅立っていきました。とても穏やかな最期でした」と話す統紀子さんは、藤本さんとの思い出を次のように振り返る。
「病気になる前に、主人に『生まれ変わったら誰と結婚する?』と聞いたことがありました。主人は『やっぱりお前かなぁ』と言ってくれました。『お前は?』と聞かれて『私は違う人がいいわ』と。『なんで?』と聞かれ、『だって、ほかの人生も興味があるもん』と答えると、主人は『おお、おお、女はそう思うか』と……。でも、いまは主人と出会えて本当によかったし、心から『58年間、ありがとう!』と言いたい。この気持ちは、生まれ変わっても変わらないでしょうね」