「当院では、6年間でネット依存症の患者数が3倍以上に。最年少では10歳の患者もおり、低年齢化が進んでいます」(成城墨岡クリニック・墨岡孝院長)
子供に広がるIT依存。その中心はネットだが、昨年厚労省が発表した実態調査では中高生の約52万人がネット依存という結果が出た。ネット依存アドバイザーの遠藤美季さんは言う。
「顔が見えない分、悪口も言いやすいため、いじめの温床になりやすい。ネットの書き込みでは饒舌なのに対面では話せなかったり、マナーがわからない子も増えています」
そこでこのお二人の話をもとに、家庭でもできる“子供のIT断食”成功の掟をまとめた。
【1】親がまずネットをやめる
「ネット依存に陥っている子供は、親も依存傾向にあるケースが少なくありません。母親に話しかけても、スマホに夢中で『あとにして』と言われると、子供は自分よりスマホを優先されたと傷つきます」(遠藤さん)
【2】ネット依存のデメリット(視力低下、学力低下など)を書き込んだカードを作る
成城墨岡クリニックでは、カウンセリングでネットの弊害や、やめることのメリットを話し合ったうえでカードに記載し、本人に持たせる。「これによって問題を『見える化』し、意識づけをすることが目的です」(墨岡先生)
【3】1日のネットの使用時間を表にして見せる
こちらも、依存度合いを「見える化」するための作業。本人が面倒がる場合は、親も一緒にやってあげよう。
【4】1日のネット使用時間は2時間以内を目標に
断食と言っても、ゼロにする必要はない。墨岡先生によれば、1日のネット利用時間の目安は2時間以下という。「昨年文科省がおこなった学力調査では、まったくネットを利用しない子供より、1時間以下の利用をしている子供のほうが、正解率が高くなる傾向も。適度な利用は好影響ももたらします」(遠藤さん)
【5】ネット以外のことを、家族で一緒にする時間をつくる
ネットにハマる子供たちは、ほかの過ごし方を知らない場合も少なくない。「トランプやウノなど、みんなで遊べるアナログなゲームは会話も生まれるのでおすすめ」(遠藤さん)
【6】いきなりネットを取り上げたり、強く叱ったりしない
「ネット依存はほかの依存症と同じです。いきなり取り上げると、無気力になったり、暴力をふるうなど最悪のケースに」(墨岡先生)
母の小言はIT断食の大敵。しかしいっぽうで、しっかり会話することが依存予防につながることもある。
「ネット依存の背景には、常に誰かとつながっていないと不安になる『きずな依存』や、生活の目標がないために動画やブログを見続けて好奇心を満たす『コンテンツ接触依存』が隠れています。子供の声に耳を傾け、将来の夢などを話し合うことで、子供もネットへの逃避を防ぎましょう」(墨岡先生)
せめて家族間では、心のこもった直接の対話を見直すべきだろう。