4月16日に韓国・珍島沖で転覆した旅客船セウォル号。死者・行方不明者300人を超える大惨事の責任を、運航していた船会社はどう償うのか?
「朝鮮日報」によれば、セウォル号は1人あたり約3千450万円、全体で1億ドル(100億円超)を上限とする賠償責任保険に加入していた。これで遺族への賠償金は賄えるのか。海難事故に詳しい弁護士が試算する。
「日本と韓国では計算法が違うと思いますが、日本の場合だと、賃金センサスという厚労省の賃金の統計調査を用いて、逸失利益を算定します。今回は、まだ働いていない高校生の被害が多かったわけですが、この計算式にあてはめると、16歳男性の場合で約4千360万円になる。それに慰謝料をプラスすれば、平均6千万~7千万円になるでしょう。韓国ならその半分、3千万~3千500万円というところでしょう」
300人ならトータルで90億~105億円という計算になる。遺族への賠償だけで、保険金はきれいさっぱりなくなってしまう。しかも、それだけでは到底すみそうにない。遺族感情を考えれば沈没した船体をそのままにしていくわけにはいかない。この船の引き揚げ費用が莫大なものになる。
複数のサルベージ会社に聞くと、「10億円ではぜんぜん足りないですね。100億円かかっても不思議ではない」と口をそろえた。さらに「すべて終わるのに半年ぐらいかかる可能性がある」というのだ。
「いま大きなクレーン船が出ていますが、1隻で1日100万円かかる。乗組員も作業しているので、その給料も必要です。クレーン船が4、5隻出れば、1日1千万円くらいはかかってしまう。100億円という数字はほぼ妥当だということです」(前出・弁護士)
この100億円を負担できなければ、船会社は倒産の道を強いられる。だが、会社が倒産して賠償もご破産では、遺族が納得するはずがない。
「なにしろ、今回の事故は世界が注目していますから、韓国政府は船会社が起こした事故と知らん顔をするわけにもいかない。国としてきちんと処理することができるかどうか、朴槿恵大統領の力量が問われている」(元時事通信ソウル特派員の室谷克実氏)
大統領の支持率は、事故後わずか1週間で71%から56%に急落した。セウォル号は朴政権まで転覆させるか。
(週刊『FLASH』5月13・20日号)