「’13年の厚労省の統計によると、平均寿命は男性80.21歳、女性86.61歳、男女平均84歳は世界一です。さらに、日本人は女性の2人に1人、男性の4.5人に1人が90歳まで生きるという統計もあります。長生きは喜ばしいことですが、老後の生活設計を立てておかないと破綻しますよ」
そう語るのは、『ダンナの遺産を子どもに相続させないで』(廣済堂出版)の著者で、ファイナンシャルプランナーの高橋成壽さん。高橋さんは、「ゆとりある(老後の)生活を送るために生活費がいくらかかるのか把握して、早めに対策を立てるべき」と、アドバイスする。
90歳まで生きるとなると、さすがに不安……。そこで高橋さんに、老後破綻を防ぐためのコツをうかがった。
定年後、夫婦2人でいくら生活費がかかるのかみてみよう。総務省の家計調査によると、60歳以上の夫婦2人の生活費平均は、無職の世帯で1カ月24万2千598円(’13年)にもなっていた。
「内訳は平均で食費が約6万円、水道光熱費が2万円、住宅費はローンの返済が終わっているのが前提で、不動産にかかる固定資産税が約1万6千円、洋服代が7千35円と、衣食住にかかるお金は多くありません。ところが残りの支出、交通費や教育娯楽、交際費を含むそのほかの支出を合わせると、約11万3千円もかかっています。ぜいたくざんまいをせずとも、今までできなかった趣味や旅行を楽しむだけで、かなりの支出になってしまうのです」
この支出以外にも、国民健康保険の保険料、妻が60歳になるまでは国民年金保険料を支払わなければならない。こうした非消費支出約3万円をプラスすると月々の総支出は27万2千455円にもなる。これに対して、夫が会社員(厚生年金と国民年金)/妻が専業主婦(国民年金のみ)の夫婦がもらえる年金は、合わせて「月23万円」というのが現状だ。
「ざっと計算すると、月4万円の赤字です。赤字分は1年で48万円、30年で1440万円になるので、会社員の家庭であれば、夫の退職金と少しの貯金でまかなうことができるでしょう。妻自身に厚生年金がある場合も大丈夫。問題は、夫が自営業者の場合と、夫が国民年金しかない妻よりも先に亡くなった場合です。夫が妻よりも先に亡くなるということは、もらえる年金が減るということ。慌てないためにも、妻が一人で生活していける額がいくらなのか、知っておきましょう」